2005 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ文学における19世紀から20世紀にかけてのNewWomanの表象について
Project/Area Number |
15510225
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中川 優子 立命館大学, 文学部, 教授 (70217686)
|
Keywords | ジェンダー / アフリカ系アメリカ文学 / ニュー・ウーマン / 女性の大学教育 / ジェシー・フォーセット / 女性参政権 / ヘンリー・ジェイムズ / 英米文学 |
Research Abstract |
これまでのNew Womanの定義では大学教育を受けているという条件をつける研究書が多かった。しかし近年の批評では必ずしもそうではない女性たちがNew Womanとして分析されていることに本年度は注目した。事実、New Womanについての批評を分析したところ、大学出身かどうかという点では必ずしもこだわっていないものが多かった。例えばMartha Bantaはむしろ参政権運動へのこだわりをNew Womanの特性としてあげている。また2005年のMLAでの"Southern Women Writers Re-Create the ‘New Woman'"というセッションでは、Ellen Glasgow自身や彼女の作品のヒロインを例にあげて、高学歴が必ずしもNew Womanの条件とはいえないという意見が述べられた。確かに以前からNew Womanの一人としてみなされてきた、Henry JamesのThe BostoniansのOlive Chancellorはドイツ語書籍を読む知識人であるが、大学教育は受けていない。New Womanの定義はそれだけ多様であるということである。 本年度はまたアフリカ系アメリカ人にとってのNew Womanの表象を分析した。Jessie Redmon Fausetの"The Sleeper Wakes"(1920)は、Elizabeth Ammons氏が述べるように、それまでの白人のNew Womanのあり方に疑問を投げかけた作品であるといえる。個人の自由を尊重するよりは、コミュニティに貢献するという、新しいNew Womanを登場させたのである。ただしAmmons氏も言及するように、このコミュニティ重視の考え方は、1889年にHull-Houseを創設したJane Addamsに通ずるものである。そしてこのFausetの主張は、この作品が連載された雑誌The Crisisの、アフリカ系アメリカ人に理想、文化を提供するという編集方針にそったものであることが、雑誌のマイクロフィルムより確認できた。この雑誌の編集者であったFauset自身がNew Womanを体現しているといえるであろう。
|