2003 Fiscal Year Annual Research Report
非主我的愛の成立基盤としての修道院霊性に関する研究
Project/Area Number |
15520004
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
桑原 直己 筑波大学, 哲学・思想学系, 助教授 (20178156)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 学 筑波大学, 文芸・言語学系, 助教授 (80231843)
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Keywords | 愛 / 修道生活 / 兄弟的矯正 / 説教 / トマス・アクィナス / 共住修道院 / 托鉢修道会 / 東方キリスト教典礼 |
Research Abstract |
本課題に取り組むにあたり、桑原は、トマス倫理学の全体構造の解明を意図した博士学位論文『トマス・アクィナスにおける愛の倫理と正義の倫理』(2003年12月博士(文学)、東京大学、取得)に至るまでの研究から得られた知見を基礎とした。即ち、当面「非主我的な愛の倫理」のモデルを、トマス倫理学の中核概念である「神愛caritas」の概念に求めるところから出発した。そのため本年度はまず、2本の論文において、神愛を支える基盤としての「修道生活」に対するトマスの視座の解明から着手した。「トマス・アクィナスにおける「兄弟的矯正correctio fraterna」について」においては、神愛を保持するための修道共同体の内部的機能、即ち「罪」に対する支え合いとしての修道共同体の意味についてのトマスの基本理解を解明した。「トマス・アクィナスにおける「説教praedicatio」の意味について」においては、修道共同体における「神愛」倫理の対外的な展開を、特にトマスが所属した「説教者兄弟会(ドミニコ会)」が特に主要的に重視した、人々を神愛に向けて促す活動としての「説教」という活動の意味についてのトマスの視点を明らかにした。以上のトマスについての個別的な研究を出発点として、今後修道制についての包括的な研究として、前者の論文からは、「共住修道制」の霊性と「隠修士」との霊性との関係の問題、後者の論文からは、ベネディクト的な修道パラダイムから、托鉢修道会や近代以降の活動的修道会へと修道制が展開したことの意味の問題へと、問題を敷衍して展開する可能性が明らかとなった。特に、「共住修道制」と「隠修士」との関係の問題は、西方的な修道パラダイムと東方的な修道パラダイムとの対比の問題とも関連する、との見通しを得ている。また秋山は、東方キリスト教修道院における典礼の基本精神と、大乗仏教思想における愛の観念、特に菩薩道との関係についての意欲的な解明を展開している。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 桑原 直己: "トマス・アクィナスにおける「兄弟的矯正correctio fraterna」について"筑波大学哲学・思想学系『哲学・思想論集』. 第29号. 45-60 (2004)
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[Publications] 桑原 直己: "トマス・アクィナスにおける「説教praedicatio」の意味について"筑波大学倫理学研究会編『倫理学』. 第20号. 35-50 (2004)
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[Publications] 秋山 学: "ギリシア教父と般若思想-東方典礼とアレクサンドリアのクレメンスを手がかりに-"筑波大学文藝・言語学系『文藝言語研究文藝篇』. 第44号. 1-19 (2003)