2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520006
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
渋谷 治美 埼玉大学, 教育学部, 教授 (50126083)
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Keywords | シェリング / フィヒテ / ヘーゲル / 自由 / 根底 / 悪 |
Research Abstract |
今年度は中期シェリングの研究に集中した。『人間的自由の本質』(1809)を2度丁寧に読みとおした。テキストとしては、岩波文庫の西谷啓治訳を用い、適宜Felix Meiner社の哲学文庫の新版を使った。 渋谷が本研究を開始するにあたって立てた暫定的な仮説によれば、シェリングは中期から晩期にかけて、スピノザ主義による価値ニヒリズムを回避する立場から最後はスピノザ主義の汎神論を脱却してキリスト教の一神教に戻ったはずである。今回の研究により、この見通しが大枠で間違っていなかったことが確信された。彼は神を価値の絶対的基準として立てることによってその存在を弁証していくのであるが、これはいわば神の「価値論的証明」とでもよぶことのできる型である。 だがこうした神の存在証明を迫られたところに、シェリング思想の背景としての価値ニヒリズムが伺える。今後は、同じ価値ニヒリズムを思想的な背景として出発しているヘーゲルと照らしたとき、ヘーゲルに対抗しようとする姿勢がどういう形でシェリングの価値ニヒリズム回避の議論に反映しているのか、を探ろうと思う。 H.16年1月下旬に科研費でウィーン大学を訪問し、共同研究者のペルトナー教授と親しくシェリングについて議論を交わしたことは、教授が若い頃シェリングを集中的に研究していた事情もあって、たいへんに有意義であった。 その他としては、フィヒテの知識学にはじめて挑戦しはじめた。これは次年度にかけての研究となるが、これによってフィヒテ、シェリング、ヘーゲルの、ドイツ観念論の巨頭が価値ニヒリズムに対して(スピノザを媒介としながら)どのような態度を取っていたか、その相互連関はどうであるか、の概要が把握できるであろう。
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Research Products
(1 results)