2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520006
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
渋谷 治美 埼玉大学, 教育学部, 教授 (50126083)
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Keywords | カント / フィヒテ / ヘーゲル / 知識学 / 大論理学 / ニヒリズム / ドイツ観念論 / 自己実現 |
Research Abstract |
最終年度の今年度は、(1)まず、編著者として『ニヒリズムとの対話』(晃洋書房)を出版し、そのなかに、年来のカントと価値ニヒリズムとの関係の研究の集大成として、「カントにおける価値のコペルニクス的転回」を掲載した。これは多くの研究仲間から好評を得た。(2)フィヒテの『1794年の知識学』を精読した。(i)カントとの思想史的関係で、予想したほどカントの自己実現論をフィヒテは継承していない、ということが判明した。(ii)また、カントほどには善悪をはじめとする価値に関しての危機感は(この著作のかぎりでは)顕著でない、ということも判明した。(iii)ヘーゲルとの関係でいえば、ヘーゲルは相当にフィヒテ『知識学』の議論の仕方を踏襲していることが顕著であること、それがヘーゲル特有の弁証法の論理的特徴に直結していること、が実感された。この発見は、今年度の研究の大きな収穫であった。(3)ヘーゲルの『大論理学』の精読に取組み、年度末で3分の2まできた。(i)正直にいって、大半ヘーゲルの思索展開を追うことができないのは情けなかった。また善悪をはじめとする価値に関する議論は、仄めかし程度のものすら発見できなかったのには失望した。「ドイツ観念論と価値ニヒリズムの問題」という研究テーマからしてこのテキストは外れであった。(ii)反面、注などにおいてふんだんにヘーゲル特有の魅力的な弁証法的思索が具体的に展開されていて(講義の語りの再現)、収穫も大きかった。 総じて、研究テーマに即して総括すると、直接的な成果は少なかった。したがって本研究テーマは、今後研究計画を練り直して、中期的な研究課題とする必要があると考える。反面上述のように、いくつかの周辺的な成果に恵まれたといえる。
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Research Products
(1 results)