2003 Fiscal Year Annual Research Report
理論的・実証的探究に基づく応用倫理諸部門の統合可能性の研究
Project/Area Number |
15520020
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
高橋 隆雄 熊本大学, 文学部, 教授 (00145278)
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Keywords | 応用倫理の統合 / 生命倫理 / 環境倫理 / ケア / 調査倫理学 |
Research Abstract |
当初の研究計画では、今年度は理論的側面においては、内外の文献・資料を収集し、これまでの倫理学の歴史において蓄積されてきた議論に基づきつつ、応用倫理諸部門の連関を構想し、特に生命倫理と環境倫理の連関に力点を置くことを考えていた。今年度はほぼその通りの研究ができた。現在、生命倫理と環境倫理が重なる領域(ヒト胚、実験動物、将来世代)が盛んに議論されており、二つの倫理を乖離した状態に放置することは不適切であり、両者を統合する必要が生じてきている。その統合の仕方には権利概念や功利の原理を用いるといったようにいくつか考えられるが、「ケア」概念を用いて行うのが最も妥当であることを理論的考察からの帰結として導いた。 本研究の両輪のもう一方は実証的研究であるが、こちらは当初、大学生と高校生で計約600名のアンケート調査を計画していたが、実際には大学生約200名の調査にとどまった。しかし、過去のいくつかの調査を再検討し設問に相当の工夫を凝らし、質的と量的という二つの性格を質問の中に統合することを試みたが、その結果はかなり満足のいくものであった。また、心理学等でのように、倫理学においても標準的な質問項目を作成することにも労力を注いだ。倫理学概念の意味の多義性や相互連関のゆえに、容易な作業ではなかったが、標準化に一歩近づくことができた。 いずれにせよ、調査に基づく倫理学というこの領域は前人未到のものであるため、これからも試行錯誤を繰り返していかざるを得ないだろう。なお、今年度の研究成果は「生命と環境の倫理-ケアによる統合の可能性」(高橋隆雄編著『生命と環境の共鳴』九州大学出版会2004年所収)という論文に結実した。
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Research Products
(1 results)