2003 Fiscal Year Annual Research Report
土田杏村の「生活価値の哲学」とその倫理思想史的研究
Project/Area Number |
15520028
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
清水 正之 東京理科大学, 工学部・教養, 教授 (60162715)
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Keywords | 土田杏村 / 日本思想史 / 倫理思想史 / 生活価値 / 華厳 |
Research Abstract |
(1)土田杏村全集(全集15巻)に収録されたものを中心に、その全体像への理解を深めることをめざした。全集は未収録のものも多く、かならずしもテキストとして十分なものではないので、先行する諸研究でも見落としている資料を、佐渡などで調査し収集をはかった。(2)あわせて現時点では入手していない先行する研究書、論文を収集整理して研究の準備をととのえた。 (3)テキスト類の考察では、とくにまずは、初期の華厳論、象徴の哲学の構造を明らかにするとともに、中期の社会哲学との内在的な関係という、従来の研究の十分でない部分を考察し成果を得た。その成果、とくに華厳論については、土田がはじめて哲学的見方から評価した国学者御杖との連関を、近著『国学の他者論』(ぺりかん社)の最終章に盛り込んだ。また日本感性工学会感性哲学部会大阪大会にて「人と人をつなぐ-土田杏村の華厳理解と近代日本哲学史に於ける共同性」の題のプロシーディングを提出するとともに発表を行った。 (4)それとともに、本研究の特色である、日本精神史研究の細部を、神話・上代史・仏教観・芸術観・国文学史観・「国民」概念などにわけつつ、詳細に検討した。また倫理思想史研究という視点から、あらためて大正期の新カント派、現象学、生の哲学の日本での受容や価値をめぐる議論と、土田の問題構成との関係を考えた。 (5)『日本支那現代思想研究』(原英文"Contemporary Thought of Japan and China")などの東アジア哲学思想・文化への関心の質を明らかにするとともに、近代日本思想史研究の流れの中で、土田が日本近代だけではなく、東アジア近代でどう位置づけられるか、土田の当時の中国思想・東アジア思想に関する理解が、現在どう受け止められているか等を、今年度は、諸般の理由から中華民国を中心に調査し、研究者との意見交換をはかり、資料およびあらたな知見をえた。以上を通じての総合的考察から得た中間的成果を発表をし、また原典テキスト・研究論文に関して明らかになった部分を一部データベース化した。
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Research Products
(2 results)