2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520032
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Research Institution | University of East Asia |
Principal Investigator |
上原 雅文 東亜大学, 総合人間・文化学部, 教授 (30330723)
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Keywords | 神 / 仏 / 古事記 / 最澄 / 天皇 / 神話 / おのずから / みずから |
Research Abstract |
本年度は、主に神の概念について研究を進めた。神話の分析において、外面的な<物そのもの>(身体を含む)が神と見なされる面と、内面的な<感情・欲望>が神と見なされる面とが見られることが改めて確認された。いずれも、「おのずから」なるものであり、意識(「みずから」)にとって、「外部」である。そして、一連の研究において、原初的な神を<存在者を存在せしめている存在それ自体の根源的な生成的威力>と定義することができた。簡略して言えば<存在の生成的威力>である。以下、具体的な研究成果を列記する。 1.『古事記』上巻神話の解釈を行い、まず、上巻神話の神武天皇誕生に至るまでの物語が全体として緻密に計算された思想表現になっていることを構造的に明らかにした。そして、その中心思想が天皇の神聖性であり、神聖性の根拠が外部と特権的に関係できる新たな方法的意識(新たな祭祀意識)にあることを明らかにした。 2.東亜大学・総合人間・文化学部の紀要論文「古代日本の神と自然環境-自然観の再検討をめぐって」(2004年9月刊、400字×60枚)では、機械論的自然観とは別の自然観を模索するための示唆として、『古事記』に記載されている「大物主の神」についての神話を分析した。分析の方法として現象学的方法を援用した。フッサールの「物」(超越)概念は、日本の神概念の解明に有効だからである。解明できたことは、特定の存在者(木・岩・山など)を神の媒介者(依代)と見なすことの認識論的な根拠が、存在の意味を実感し、豊饒を実感しようとする超越論的自我の欲望にある、という点である。 3.神・仏概念の原理的な関係についても考察を進め、その成果の一部を平成16年中に『最澄』(ぺりかん社)で公刊する(400字×約580枚)。その中で、神を存在の「質料的側面」である「物」的な<存在の生成的威力>とし、仏法を存在の「形相的側面」である理知的な<存在の真実相>とし、その両者の関係をめぐる古代思想の中に最澄思想を位置付けた。
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Research Products
(2 results)