2004 Fiscal Year Annual Research Report
日本における神仏関係思想をめぐる倫理学的基礎研究-神・仏概念の原理的解明-
Project/Area Number |
15520032
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Research Institution | University of East Asia |
Principal Investigator |
上原 雅文 東亜大学, 総合人間・文化学部, 教授 (30330723)
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Keywords | 神 / 仏 / 景観 / もの神 / たま神 / 存在の生成的威力 / 存在の真実相 / 存在と意識 |
Research Abstract |
本年度は、主に、神と仏とが関係する場面の原理的構造の解明を進めた。 神は<存在の生成的威力>であり存在の質料的側面であるが、日常的意識からすれば不可思議な外部である。祭祀とはその威力を秩序化することで豊饒をもたらすことである。仏教移入以前に、神は「もの神」と祭祀意識の範型としての「たま神」に分化していた。仏は絶対知を体得した者の意である。絶対知の対象である真理は存在の形相的側面である<存在の真実相>である。仏の絶対知と<存在の真実相>のいずれも、日常的意識からすれば外部である。 神と仏は、原理的に言えば存在と意識の両極として、別の外部である。別原理である神と仏とが関係する場面は多様である。以下、解明しつつある諸現象について列記する。 1.外部一般としての神と仏 ・神仏ともに外部をすべて神とする。原理的な差異は考慮されない。仏教移入初期に見られる。 2.存在を秩序化する意識の範型としての神と仏、同一性と差異 ・仏が新たな「たま神」として受け入れられ、神と同一視される。しかし、神的祭祀は情的方法、仏的祭祀は知的方法であるという差異が見られる。 3.存在(情欲)と意識(知)という別原理性を保持する神と仏、その変遷 ・擬人化された崇り神(「もの神」)が仏法によって鎮魂される、という現象がある。奈良初期の「苦しむ神」である。また御霊信仰では、怨みを持つ死霊が崇り神となり、その情欲を秩序化する知として仏法が位置づけられている。これらにおいては、神と仏とが、別原理性を保持しつつ関係している。それらの変遷も解明中である。 4.存在の豊饒としての神と仏、その融合 ・仏法によって祭られた神は豊饒をもたらす威力となり、<存在の真実相にある生成的威力>となる。存在の側で、神と仏の原理(質料と形相)が相互に補いあう形で融合する。 以上の研究の一部を科研成果報告書および『最澄再考』(ぺりかん社)で発表した。
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Research Products
(2 results)