2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520037
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
末岡 宏 富山大学, 人文学部, 助教授 (10252404)
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Keywords | 近代 / 中国 / 国学 / 日本 / 文化交流 / 王国維 |
Research Abstract |
1.清代中期の学者崔述は、経書の成立そのものを疑う点で、経書が漢代に偽作されたとする康有為らには評価されず、国故整理運動期の1920年に胡適・顧頡剛らに再評価された。崔述の「再発見」は、西洋の歴史学を取り入れた伝統的学術の再構築である「国学」の成立の一つの指標となる。胡適・顧頡剛らは『国朝先正事略』の記事によったとするが、日本では那珂通世が崔述に注目し1903年にはその著作集『崔東壁遺書』を復刊しており、その影響が考えられる。購入したCDROMを調査した結果、崔述に関する記述は1906年に『国粋学報』に発表された当時日本に亡命していた劉師培の「崔述伝」が初出で、那珂通世の『崔東壁遺書』について触れることから、最初の崔述再評価は日本の歴史学が発端となったことがわかる。ただし、劉師培の「崔述傳」と胡適らの崔述再評価との間には15年の隔たりがあり、相互に関連があるかどうかについては疑問の余地がある。 2.「国学」形成に影響を与えた明治期の日本における中国関係の著作について調査した結果、書籍のほとんどは国立国会図書館の電子ライブラリーに電子図書の形で収録されておりこれを利用することとしたが、雑誌は電子化されておらず『日本における東洋史論文目録』にも目録が収録されていないため国立国会図書館で哲学雑誌の調査を行った。その結果、王国維の1904〜6年の著作「論性」「釈理」「原命」は西洋の哲学の概念を用いて中国の伝統思想を分析したほぼ初めての著作であるが、その手法は元良勇次郎の『倫理学』(1893年日本・冨山房)に基づいていることがわかった。また王国維の西洋哲学関係の翻訳を日本の翻訳書と比較した結果、哲学に関する知識は初期の段階では日本の西洋哲学入門書を用いているが、1903年の時点で英語の原書から翻訳ができるレベルにあったことが判明した。
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