2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520037
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
末岡 宏 富山大学, 人文学部, 助教授 (10252404)
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Keywords | 中国 / 国学 / 日本 / 西洋文化受容 / 中体西用論 / 和魂洋才 |
Research Abstract |
日中双方の研究者が見落としていると思われる、日本と中国の西洋文化受容と中国の「中体西用」論と日本の「和魂洋才」をキーワードとして比較・考察を行った。自国の社会・文化的側面を保持し、西洋の科学・技術を受け入れようとする点が共通する。しかし日本においては「和魂洋才」は明治中期から使われるが、「和魂」の実体ははっきりしない、つまり全面欧化に対抗する論理として登場している。それに対して「中体西用」論は洋務運動期から使われはじめ、「中体」とは中国の当時の政治・文化体制を指し、反西洋文化に対抗する論理として現れる。つまり、双方の論理構造は一見同じように見えるが、目指す方向は反対を向いている。 日本で明治中期に始まった国学運動は国粋主義と密接な関係があり、漢学(中国学)を含めて日本の伝統的文化を見直し再発見するものである。つまり、実体のはっきりしない「和魂」というアイデンティティー探しの結果、苦し紛れに中国を含めた東洋の中にその根拠を求めたものである。明治中期は第1次中国人日本留学ブームのピークであって、留学生を中心とする中国知識人は、この「国学」を「中体西用」論の文脈で自らの文化的矜持を裏付けるものと理解したのである。つまり「国学」は、表面的には同じでも、その目指す方向は日本と中国では全く異なる。日本の「国学」と中国の「国学」の比較研究において、この違いをもとに相互の関係を考察する必要がある。
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