2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520042
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
土田 健次郎 早稲田大学, 文学部, 教授 (00120923)
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Keywords | 近世思想 / 朱子学 / 道統 / 正統 / 中国:日本 |
Research Abstract |
本年度は、朱子学における正統論を考えるうえで最も重要な文献である『資治通鑑綱目』に対する検討を開始した。従来、本書は『四庫全書総目提要」「綱目分註補遺」の項に代表されるように、朱熹が企画し趙師淵が完成させたと言われてきたが、これに対する再検討が近年中国でなされはじめた。その中心には、朱熹の自著であるという「凡例」と、趙師淵あての朱熹(朱子)の書簡の信憑性に対する間題視がある。本年はこの説の検討から始めた。同時に朱熹自身が正統と道統をどのように考えていたのかを、朱熹の原資料をもとに考察を行い、特に正統を正当化する禅譲と革命に対する朱熹の考えが、従来臆断されているものとは異なることに注目した。更に後の朱子学の正統論が「凡例」を規範にしつつ、更にそれを変容させていく過程の調査を開始した。また朱子学の正統論の日本的展開の一典型として、江戸時代の朱子学を代表する山崎闇斎学派の浅見絅斎の手になり、後の大義名分論に大きな影響をあたえた『靖献遺言』と『靖献遺言講義』の検討を開始した。これは同時に日本おける朱子学的道統論の受容と密接に関連している。 従来、宋代道学の研究は明代の思想状況を遡及させることが多く、道統論や正統論もその例外ではない。しかし同じ用語を使用しても宋代と明代では含意の差があるのであって、宋代道学の実情を明らかにするには、宋代の思想を宋代のものとして検証しなおすことが重要である。今年度は宋代道学を明代思想の文脈から開放する試みとして、万物一体の思想の系譜と言われているものに、全面的な再検討を試みた。この結果、北宋、南宋、明の各時期の万物一体論が明確な差異を持つことを明らかにした。この成果は朱子学の本来の正統論・道統論が、明代にいかに変容し受容されていくかという問題の解明につながるものである。
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Research Products
(1 results)