2003 Fiscal Year Annual Research Report
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15520047
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
和田 壽弘 名古屋大学, 大学院・文学研究科, 教授 (00201260)
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Keywords | ガンゲーシャ / タットヴァ・チンターマニ / 動詞語尾 / ウダヤナ / ニヤーヤ・クスマーンジャリ / 言語認識 / sabdabodha / 表示機能 |
Research Abstract |
本研究は、14世紀に活躍したガンゲーシャの『タットヴァ・チンターマニ』「言語認識部」(Sabdakhanda)「定動詞語尾章」(Akhyatavada)を英語に翻訳・分析し、彼に先行する11世紀のウダヤナの影響を明らかにすることを目指したものである。このテキストは次の六つの部分に分割できる。(1)ニヤーヤの一般説、(2)ミーマーンサー説、(3)それへの反論、(4)『ラトナコーシャ』の説、(5)それへの反論、(6)ニヤーヤの最終説である。本年度は、(1)から(3)までの部分を英語に翻訳して註を施し、"Gangesa on the Meaning of Verbal Suffixes (1)"と題してWilhelm Halbfass追悼記念論集(ウィーン)に投稿した。目下印刷中である。 上記論文の序において、新ニヤーヤ学における言語認識に関する先行研究を概観し、本研究で使用するサンスクリットテキストおよび注釈書を確定し、定動詞語尾の意味に関する議論を理解するために前提となる術語の規定を行った。扱った術語は「定動詞語尾」(akhyata)、「意志的努力」(krti, yatna, prayatna)、「表示機能」(vrtti)、「言語認識」(sabdabodha, sabdajnana)である。新ニヤーヤ学派は定動詞語尾の意味は意志的努力であるとし、ミーマーンサー学派は作用(vyapara)であるとする。後者の「作用」とは場合に応じて精神的なものを指したり、物理的なものを指したりする。意味を確定する基準は、どちらの理論が定動詞語尾の現実の言語使用を説明できるかという点にあることが明らかとなった。また、ガンゲーシャの議論は、ウダヤナの『ニヤーヤ・クスマーンジャリ』第五部(stabaka)の中の議論、すなわち、ヴェーダの文章における願望法に用いる定動詞語尾からヴェーダの作者としての神の存在を証明するという議論に、かなりの程度依っていることが判明した。この点の根拠となる、(1)から(3)のガンゲーシャのテキストとウダヤナのテキストの対応箇所を指摘した。
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