2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520050
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
榎本 文雄 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (70151991)
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Keywords | 漢訳仏典 / 雑阿含経 / 阿含経典 / 大正新脩大蔵経 / 高麗大蔵経 / 中華大蔵経 |
Research Abstract |
今年度の研究実績として、まず、11月に京都大学で開催された「中国宗教文献研究国際シンポジウム」で「仏教研究における漢訳仏典の有用性---『雑阿含経』を中心に---」と題し、研究成果の一部を発表した。その要旨は以下の如くである。仏教を研究するに際し、中国仏教を始めとした東アジア仏教の分野では、漢文仏典は一次資料となる。では、インド・アーリヤ語(Indo-Aryan)文献が一次資料となるインド仏教の研究に際して、漢訳仏典は如何なる有用性を有するのか。1 インド語原典もチベット訳なども現存しないテキストの場合、漢訳仏典は現存する唯一のversionとして不可欠な資料である。2 インド語原典が現存するテキストでも、それと異なるversionを提示する場合、現存するインド語テキストよりも古いversionであることが多く、漢訳仏典は貴重である。3 インド語原典が現存し、それと同じversionの場合でも、漢訳仏典はインド語原典の内容理解に資したり、インド語原典の校訂に有用である。4 漢訳仏典の訳出に関する記録からそのテキストのインドにおける成立年代の下限などの重要な情報が得られる。以上の諸点に関して、最初期の仏教経典である阿含経典の一つの『雑阿含経』を例にとり考察した。 その他の研究実績として、サンスクリットと漢訳の間で対応関係にあることを確認済みの初期仏教文献に関して、学生アルバイトへの謝金を用い、サンスクリット写本の写真版による刊本の読みの再検討を実施し、また、漢訳文献に関しても、底本としていた『大正新脩大蔵経』に問題があるため、『高麗大蔵経』や『中華大蔵経』を用いた再校訂を行った。
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Research Products
(1 results)