2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520051
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岡野 潔 九州大学, 人文科学研究院, 助教授 (80221844)
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Keywords | インド仏教文学 / アヴァダーナ・マーラー / マハーヴァストゥ / アヴァダーナ・シャタカ / 梵語写本 |
Research Abstract |
1.今年度(平成15年度)において,私が十年前に作成し公表したインド仏教文学文献研究史に大規模な増補改訂を行うために必要な多くの論文や資料を新たに蒐集した。これは必要な作業の第一段階であるが,これは今年度でほぼ完了した。これらの新たに入手した資料によって,次の再執筆作業という第二段階に入ることが出来るようになった。 この私のインド仏教文学文献研究史は,西洋や日本における研究史を記述するばかりではなく,梵文写本についての情報を詳しく載せることによって,写本を用いた原典研究を日本で促進するねらいがある。写本研究の重要性を説く以上,まず私自身が率先して写本を用いて原典研究を行うべきであるのは当然である。今年度において私は仏教文学の梵語写本の研究の一つとして,次の研究を行った。 2.アヴァダーナ・マーラー文献の一つである梵文『スバーシタ・マハー・ラトナ・アヴァダーナマーラー』の世界で一本しか現存しないネパール写本を読み,いくつかの未確認の章の内容を確認する作業を行った。そして,梵文『アヴァダーナ・シャタカ』と比較して,それがどのように対応するかを調べた。 3.大衆部説出世部の聖典『マハーヴァストゥ』の中の王統史(I,338.13-348.8)のアッガンニャ神話の箇所について,写本をローマ字に転写し翻訳を行った。現代の『マハーヴァストゥ』の研究では,スナール校訂本において用いられなかった写本Sa, Sbを見る必要がある。貝葉写本Saは特に価値が高い写本である。幸いその二写本のファクシミリ版が湯山明によって2001年に出版されたため,私は写本のローマ字転写作業にとりかかり,写本Saのローマ字転写を部分的に行った。翻訳にあたっては,写本Saのほかに写本Sbをも絶えず参照し,重要な異読については注記した。その翻訳ならびにローマ字転写は,私の『マハーサンヴァルタニーカター』の翻訳研究の論文の一部に組み込まれて,『哲学年報』第63輯に発表される予定である。 これらの具体的な写本研究の成果はインド仏教文学文献研究史の執筆に生かされる。
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Research Products
(1 results)