2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520064
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Research Institution | Toyo Eiwa University |
Principal Investigator |
岩田 和子 (渡辺 和子) 東洋英和女学院大学, 人間科学部, 教授 (00223397)
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Keywords | 神話 / 死者供養 / ギルガメシュ叙事詩 / バビロニア / アッシリア |
Research Abstract |
主に死者供養と神話に関する研究において、新たな知見を得ることができた。 1.「死者供養」を巡る問題。 アッシリアの宗教文化は、メソポタミア南部のバビロニアから多くを受け継いでいるが、特に紀元前7世紀にアッシリア王アッシュルバニパルの下で収集、書写され、ニネヴェの「図書館」に保管された宗教文書によって、その到達点があきらかになっている。『ギルガメシュ叙事詩』についても、その最も古い写本は紀元前一八世紀のバビロニアのものであるが、基準となる写本(「標準版」)はこの図書館に保管されていた。この『ギルガメシュ叙事詩』標準版および神話以外の文書(法的文書など)に見られる「死者供養」の観念と、アッシリアの墓碑銘(紀元前9-8世紀)その他に見られる「死者供養」の観念を比較検討した。バビロニアでは古くから人は死後に死霊となって冥界で暮らすが、生者が定期的に捧げる飲食物に依存しているという考えをもっていたが、その考えとともにさまざまな死者儀礼がアッシリアにも受け継がれていることを確認した。 2.神話研究に関して、C.G.ユングが唱えた「神話の発展」という観点の可能性を考察した。神話は常に神話としてあるのではなく、生きた神話として受け取られることによって受け継がれてゆく。その事情は古代のバビロニアとアッシリアにおいても、また現代においても基本的には変わっていない。『ギルガメシュ叙事詩』もそれ以前の宗教文学を編んで構成されているのであり、「神話の発展」の要素をみることができる。たとえば近年注目されている「ユダの福音書」も「マリアによる福音書」も古代文書であるが、現代の「キリスト教神話」を改変し、発展させる力をもつ。このように時をこえて神話が発展する可能性について論じた。
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Research Products
(3 results)