2004 Fiscal Year Annual Research Report
思考と概念の制度化と反制度化-西洋古代におけるその動態
Project/Area Number |
15520069
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中畑 正志 京都大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (60192671)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内山 勝利 京都大学, 大学院・文学研究科, 教授 (80098102)
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Keywords | ファンタシアー / プラトン / 対話篇 / ロゴス / 理性 / アリストテレス |
Research Abstract |
今年度は、前年度の研究成果をふまえて、中畑と内山がそれぞれの研究を発展させるとともに、相互の研究の検討と集約に努めた。 中畑は昨年度に引き続いてファンタシアーの概念の分析を進め、とりわけアリストテレスのこの概念の規定の意味を再検討し、それが感覚知覚を構成するという局面をもつことを論証し、その後の変遷をたどった。さらにアリストテレスの心の哲学全般について新プラトン主義者などによる概念の変容過程を追跡した。内山は、思考とその表現形式との関係に注目し、初期ギリシア哲学者たちのそれぞれに独特の文体が各自の思想を表現するために適切に選び取られていることを明らかにした。またプラトンの著作が対話篇として書かれたことの意義の解明という、長年にわたる研究の成果を集約し、対話篇という形式が、特定の固定した教説となることから思考を解放するとともに知の客観性を確保するプラトンの積極的な方法であること、またイデア論・想起説などの基本思想と実際には深く関わっていることを明らかにした。中畑もこの内山の仕事に呼応して、プラトンのロゴスの概念について再検討し、従来は「理性」を意味すると解釈されてきた重要な用例が、実際にはそのような個人の思考推論能力を意味せず、むしろ公共的な規範とその理解という意味をもつことを指摘した。 こうした相互の研究の検討によって、内山はプラトンまでの哲学者たちの知が概念と教説の固定化をむしろ意識的に排除するような特質をもつことを指摘したのに対して、中畑はアリストテレスによるいくつかの概念の定式化および理論化とその意義を解明し、さらにその後の概念の変容と制度化の局面を明らかにした。
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Research Products
(7 results)