2003 Fiscal Year Annual Research Report
翻訳とトランスカルチュレーション:ラプラタ地域における文化的領有の諸相
Project/Area Number |
15520073
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
林 みどり 明治大学, 政治経済学部, 助教授 (70318658)
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Keywords | 土着主義 / トランスカルチュレーション / 言語行為論 / ブエノスアイレス / 混淆文化 / メアリー・L・プラット / ボピュリズム / 犯罪人類学 |
Research Abstract |
当該研究は、世紀初頭のラプラタの都市空間にあって、移民大衆が土着主義的なものを模倣しつつ、従来とは異なる異種混淆の文化的表現を創りあげるにいたったプロセスを、トランスカルチュレーションの過程としてとらえなおす。そのことをつうじて、異種混淆の文化的表現が創りあげられるにいたったプロセスと、その過程で生じた文化的抗争の諸相を思想史的な観点から析出しようとすることをめざしている。 本年度は、まずこのような思想史的観点を分析するにあたって重要と思われる歴史的方法論の精緻化をめざして理論的な研究をおこなった。その成果が"History and the Act of Reading"である。文字テクストから直接的にすくいとることの難しい民衆・大衆の声を歴史資料からどのように解析するか、その方法論を明らかにすることは、次年度のテクスト分析にとって必要不可欠な作業である。本論文では、トランスカルチュレーション論を提唱したメアリー・ルイーズ・プラットの言語行為論の歴史学ならびに思想史分析への応用方法を示した。 また、1940年代のアルゼンチンには、世紀初頭に出現した移民大衆社会とそこに出現した混淆文化の管理・統率をめざすポピュリズム政治が出現することになる。「エバ・ペロン-神話化あるいは絡みあう集合的記憶」では、人々の集合的記憶が、ひとりの人物の社会的イマジナリーにどのようにからみつき、どのように変容していったか、そのプロセスの一側面を明らかにした。今後はこのようなポピュリズム政治のルーツを、さらに歴史をさかのぼって探求することが重要になってくる。 さらに、2004年1月29日には、立花英裕・早稲田大学法学部教授が主催する「多言語研究会」で、「活字空間の形成とネイティヴィズム」の発表をおこなった。土着主義的記号がもっていた歴史的意味に関する仮説を提示し、犯罪人類学(のちに犯罪学)的な眼差しの社会への投射と、大衆的な文化に関する社会的言説の関係が相互的であった点を明らかにした。
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Research Products
(2 results)