2003 Fiscal Year Annual Research Report
西洋中世美術におけるイメージ言語とタイポロジー:図像テクストの生成・解釈・機能
Project/Area Number |
15520084
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
木俣 元一 名古屋大学, 大学院・文学研究科, 教授 (00195348)
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Keywords | 中世美術 / キリスト教美術 / 記号論 / テクスト科学 / タイポロジー / イメージ |
Research Abstract |
西洋中世の美術作品、とりわけ写本挿絵、工芸、彫刻や浮き彫り、壁画やステンドグラスなどの様々な分野で、これらの媒材を用いて描写された視覚的イメージという言語媒体を用いた図像テクストを資料として取り上げて、旧約聖書と新約聖書のあいだに対応関係を見いだす本来の意味におけるタイポロジーだけでなく、複数の要素間のアナロジーの上に成り立つ広い意味でのタイポロジーが、このような図像テクストの生成・解釈・機能においてどのような役割を果たしているかについて考察を進めた。 本年度は、とくに「スタヴロの携帯用祭壇」(ブリュッセル王立美術館所蔵)を中心に、この作品を作り上げるテクスト空間内にある秩序をもって配置された諸イメージや装飾的要素が、どのような規則のもとに全体を構成し、相互に関連し合うような「ネットワーク」を構築するかを詳細に考察した。その結果、諸イメージが書き込まれる枠の形状や相互の位置関係および諸イメージ間の形態や構成上のアナロジーが、観者がこの作品をテクストとして読んでいく際に重要であることが見いだされた。さらに、多様な読解の可能性を潜在的に備えたテクストとしての性格も、このような点から生み出されていることも明らかとなった。 また、シャルトル大聖堂の内陣中央の《使徒伝》を表すステンドグラスについて、窓の下端部に配置されたパンの生産と販売をめぐる場面と、内陣の主祭壇で執行される聖餐の秘跡をめぐる典礼とのあいだのアナロジーに立脚するタイポロジーを基盤とした、複数のテクスト相互にみられる「間テクスト性」の問題についても考察を加えた。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 木俣元一: "西洋中世美術におけるイメージ言語"統合テクスト科学の構築 討議資料. 1. 53-59 (2003)
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[Publications] 木俣元一: "西洋中世美術における図像テクストと間テクスト性:シャルトル大聖堂内陣のステンドグラスにおけるパンの主題"統合テクスト科学の構築 討議資料. 2. 53-64 (2003)
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[Publications] Motokazu KIMATA: "Gothic Stained Glass as a Text : Introduction to a Study in Visual Language"SITES: Journal of Studies for the Integrated Text Science. vol.1 no.1. 153-169 (2003)