2006 Fiscal Year Annual Research Report
美術作品の解釈における精神分析的方法の有効性と限界、その理論的・歴史的考察
Project/Area Number |
15520085
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡田 温司 京都大学, 大学院人間・環境学研究科, 教授 (50177044)
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Keywords | フロイト / ラカン / 精神分析 / 解釈 / 芸術 |
Research Abstract |
本年度は主に、フロイトの思想および精神分析の理論の形成に、イタリアないしはイタリア旅行が果たした役割り、意味について考察した。フリースへの手紙(1897年8月14日)のなかでフロイトは「まずイタリアが必要です」と述べている。1895年の『ヒステリー研究』のフロイトから1900年の『夢判断』のフロイトへ、あるいは神経生理学者から精神分析学者へと変貌していく課程で、「イタリアが必要だった」というのは、どのような意味においてなのか。この間、イタリア旅行の開始、自己分析の開始、父ヤコブの死、コレクションの開始、フリースとの頻繁な文通といった幾つかの出来事が重なるとともに、「オイディプス・コンプレックス」、「心的装置」、「メタ心理学」、「隠蔽記憶」、「誘惑理論」とその放棄、「願望充足」としての夢、などといった理論が形成されていく。イタリアから家族やフリースに送られた便りは、フロイトにとってイタリア旅行やイタリアの芸術、考古学的遺産、自然などが持っていた意味を探るうえで大きな手がかりとなる。また『夢判断』にはイタリアに関係する自分の夢が15個も取り上げられて分析されている。この観点からの研究はまだ着手されたばかりで、今後もさらに、フロイトにおける旅行と芸術と精神分析との深い結びつきについて研究を続行したい。
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Research Products
(3 results)