2005 Fiscal Year Annual Research Report
フランコ=カンタブリア美術・洞窟壁画における写実的表現の研究
Project/Area Number |
15520090
|
Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
小川 勝 鳴門教育大学, 学校教育学部, 助教授 (60214029)
|
Keywords | 後期旧石器時代 / フランコ=カンタブリア美術 / 洞窟壁画 / 写実的表現 / 統合 / 現象学 / 解釈 |
Research Abstract |
最終年度である今年度は、前年度までに現地調査で得られたデータの分析とその成果発表を中心に事業を行った。 前年度にデータを得た、スペイン・アルタミラ洞窟の大天井画に関しては、データを得た20作品の内特徴的な9作品を詳細に分析記述し、それぞれの作品に固有の問題と、それらに共通する「統合」の問題を指摘した。 序説的研究としては、スペイン・ラス・チメネアス洞窟の主要作品である「牡ジカ」に対する芸術的直接経験を記述して、道内の暗闇中における自然の岩面の形状が作品へ及ぼす影響について現象学的に考察した。 昨年度にインドのアーグラーで開催された国際学会で発表したPoetics of Seeingを、その際の質疑応答の内容を加味して改稿し、10月に慶應義塾大学・三田キャンパスで開催された第56回美学会全国大会において「見ることと作ること:ショーヴェ洞窟壁画における表現の多様性をめぐって」と題して口頭発表した。これは、約30,000年前に制作されはじめた洞窟壁画に先立って、道内の暗闇中でただ見ることによる表象が行われていたのではないかという考えを述べたものである。 5月には数年前に脱稿していた英語論文Integration in Franco-Cantabrian Parietal Art : A Case Study of Font-de-Gaume Cave, FranceがAesthetics of Rock Artの第8章として刊行された。 研究のまとめとしては、統合論にもとづいて解釈を試みた論考を書いた。 以上を含めた研究成果報告書(86ページ)を刊行した。
|
Research Products
(4 results)