2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520095
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
大西 広 武蔵大学, 人文学部, 教授 (30011307)
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Keywords | 雪舟 / 水墨画 / 遣明使 / 鎮江市 / 寧波市 / 四季山水図 / 国々人物図巻 / 文字史料と絵画史料 |
Research Abstract |
本研究では、室町時代の画家、雪舟の絵画活動について、(1)実際的な制作活動と(2)関連する文献資料との相関関係を明らかにしようとしてきた。研究は次の5つのステップを踏まえて行ってきた。(I)史料の総合的探索、(II)収集史料の読解および分析、(III)史料のヴォキャブラリーおよびイディオム分析、(IV)文献資料と絵画作品の相関関係、(V)基礎理論研究。これらにつき、対象となる時代を、とくに雪舟が遣明使節として中国に渡った時期(1467〜69年)に絞って集中的に調査・研究を行った。研究の成果としては、(1)北京での大興隆寺の長老との対応を、寺院の在所から、長老の言説の真意まで逐一明らかにできたこと、(2)北京からの帰路の金山寺での制作が、金山の名所図であるにとどまらず、発展する港湾都市・鎮港の景況をつぶさに描き表した、現存最古の図像として珍重すべきものであること、(3)旅は寧波に始まり、寧波に帰ってくるものであったが、その寧波の全貌を雪舟が描いた絵図(現在は模本で残る)が、中国にもない同時代のこの都市の相貌を活写したやはり現存最古ものであること、(4)従来は北京での制作とされてきた「四季山水図」が、江南の市民文人たちとの交流の中で生まれ、南京に滞在していた湘王に贈与されたものであったことが、画中に捺された鑑蔵印の判読から明らかになったこと、(5)滞在中に残した「国々人物図巻」が、この15世紀後半期に世界的に起こる、異国の風土や人物への関心の広がりのなかで生まれた、数多くの絵図のうちの貴重な一図に当たることを確認できたこと、などにまとめられる。以上の成果は、逐一、論文にして発表してきたが、さらに本研究の研究成果報告書として増補し公開したい。
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Research Products
(6 results)