2005 Fiscal Year Annual Research Report
美学における啓蒙と末開-現代的視点からの美学史の再構築のために-
Project/Area Number |
15520100
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
加藤 哲弘 関西学院大学, 文学部, 教授 (60152724)
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Keywords | ヴァールブルク / ウィトコウア / ルーモール / イコノロジー / カント / 美学 / 啓蒙 / 未開 |
Research Abstract |
最終年度となる本年度の課題は、これまでの研究の成果をとりまとめて報告書を作成することにあった。本研究の主たる目的は「カントの『判断力批判』を中心にしたヨーロッパにおける近代美学の歴史を、より魅力的で生産的な可能性に満ちたものとして再構築すること」にあったわけだが、設定した3つの重点目標((1)近代美学における「啓蒙」的視点の系譜の形成、(2)近代美学において「未開」のものがはたした役割の解明、(3)現代の芸術や美意識における「啓蒙」的要素と「未開」的要素との葛藤とその意義の考察)のそれぞれについて調査と分析を重ねることで、ある程度の成果を得ることができた。 本年度にあらたに発表した論文は「ウィトコウアとイコノロジーの宇宙論的野心」および「ルーモールと『料理術の精神』」についてのものである。前者は、ヴァールブルクの学風を受け継いで、「鷲」と「蛇」の図像が果たす役割を地球上のほぼすべての地域にわたって検証しようとしたウィトコウアの業績を批判的に考察したもので、第二の重点目標を達成するためのものである。また後者は、カントの啓蒙主義の精神を継承しながら美術史研究の実証主義的な基礎を確立したルーモールによる、料理術への考察を新たな視点から特徴付けたもので、第一の重点目標に深く関連する。 また本年度には、研究の進行が比較的遅れていた第三の重点目標を達成するために、ヴィーン、ヴェネツィア、ロンドンに出張して美術館やビエンナーレを訪問するなどして現代美術に対する資料調査を行い、その成果を報告書に反映させた。 この海外調査や「ヴァールブルク著作集」刊行の成果も盛り込んだ今回の研究報告書には、計8本の論文を英文要旨などとともに掲載する。これらの成果は、いずれウェッブサイト上でも公開して、この主題をめぐる議論を今後も継続していきたい。
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Research Products
(4 results)