2003 Fiscal Year Annual Research Report
日本近代美術における基層をめぐる研究―画家の地縁と作品の風土
Project/Area Number |
15520102
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Research Institution | Independent Administrative Institution National Institutes for Cultural Heritage Tokyo National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
田中 淳 独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所, 美術部・黒田記念近代現代美術研究室, 室長 (00163501)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩谷 純 独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所, 美術部・黒田記念近代現代美術研究室, 研究員 (90311159)
山梨 絵美子 独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所, 美術部・広領域研究室, 室長 (30170575)
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Keywords | 日本近代美術 / 黒田清輝 / 青木繁 / 坂本繁二郎 / 古賀春江 / 萬鉄五郎 / 基層 |
Research Abstract |
本研究では、近代日本美術研究において、ともすれば、ヨーロッパ、東京を中心にする語りやヨーロッパ近代美術をモデルとする造形至上主義のなかで省みられることのなかった個々の画家がもつ、その出身地との関連の深さと多様性を明らかにすることを目的としている。そのため、下記の視点にたって現地での調査と資料収集、および分析検討をくわえることとした。 1 画家の「居る」場と身体化された表現、2 画家の地縁、3 画家の宗教感情 上記の視点から、つぎの五人の画家をモデルにとりあげることにする。海外留学中のパリと芸術家コロニーの関連をとらえるために黒田清輝、九州筑紫平野と東京の美術界との往還の意味から青木繁、古賀春江、同じく岩手県東和町と東京との関連から萬鉄五郎、地縁、風土に根ざした画家のもつ宗教感情を検討する意味から坂本繁二郎、古賀春江を中心にとりあげる。 すでにこれらの画家とその作品については、相当の研究蓄積があるが、現状では、東京を中心とする通史的な日本近代美術史のなかでの位置付けが定着化する一方、近年、各地域における緻密な調査がかさねられており、これまで明らかにされてこなかった側面があきらかになりつつある。本研究は、両者の成果が乖離している現状を批判的に検証、統合する作業をつうじて、新たな近代日本美術研究における作家、作品研究の方法論を確立するための基礎的な研究成果をあげることを目的としている。 平成15年度は、初年度にあたり、下記の研究協力者を招聘し、研究協議会、及び研究会での研究発表を行った。 (1)植野健造(石橋財団石橋美術館)、平沢広(萬鉄五郎記念美術館)の両氏とともに、福岡県、岩手県、両県での、近代美術の研究状況の概要を発表願い、あわせて、今後、当該地域での、明治期から昭和期にかけての美術関係記事の収集と調査をすることになった。あわせて、東京地域で発行されていた諸新聞の二科会関係記事の収集調査を開始した。(平成15年12月15日研究協議実施) (2)クリストフ・マルケ(フランス国立東洋言語文化研究所)を招聘し、フランス国内での日本人画家関係資料の調査状況について協議し、研究発表と討議を行った。発表題目「明治後期に滞日した仏人エマニュエル・トロンコワと日本の洋画壇」(平成15年12月24日実施)
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