2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520109
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
位藤 邦生 広島大学, 大学院・文学研究科, 教授 (10069536)
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Keywords | 宗祇 / 『老葉』(わくらば) / 『老葉』初編本 / 『老葉』再編本 / 諸本校合 / 宗祇全集 / 自注 / 本文異同 |
Research Abstract |
本研究では、宗祇の個人句集のうち、自選第二句集『老葉』と自選第三句集『下草』をとりあげて、それぞれの諸本を収集し、翻字と綿密な校合を行うことによって、テキストとしての『老葉』と『下草』の性格を把握した上で、宗祇全集作成のために留意すべき点などの研究を行った。 1.『老葉』については、先行研究の成果を生かして、(1)初編本(無注)(2)再編本(無注、甲類・乙類)(3)再編本(有注本、自注・宗長注・祇長併注)に分類して諸本を収集し、翻字、校合を行った。これらの作業の成果は、研究報告書において詳細に示す予定である。 2.すでに活字化されていた(1)吉川重喜蔵吉川経基筆本、(2)明治大学図書館蔵毛利家旧蔵本(甲類) 書陵部蔵宗訊筆本(乙類)、(3)金子文庫本(祇長併注本)等も、写真を入手し、翻刻の確認を行った。 3.『下草』については、複数の写本を入手し、翻字にとりかかったが、研究成果をとりまとめるには至らなかった。 4.『老葉』諸本の校合、研究の結果、特に有注本のうち、祇長併注本の本文について、さまざまな形態の異同が存することが判明した。祇注、長注のそれぞれの本文の混在の有りようは、それらの本文の伝流過程を示していて、非常に興味深い。これについては、本研究ではそれぞれの本文の性格を示すにとどまるが、今後個別の写本のさらなる研究が必要となる。 5.本研究の結果、宗祇の個人句集では、単純な善本の特定と、それをテキストとする全集本文の作成では、今後の研究の基礎とするためには、不十分であり、大曽根章介・久保田淳編『鴨長明全集』で試みられた諸本の対照が可能な本文提示が大切になる。
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Research Products
(2 results)