2003 Fiscal Year Annual Research Report
文学周辺領域を含めた琉球・沖縄文学関連書目の所在調査と研究及び解題目録の作成
Project/Area Number |
15520135
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
中野 真麻理 国文学研究資料館, 文献資料部, 助手 (50280532)
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Keywords | 仏教 / 説話 / 絵画 / 民俗 |
Research Abstract |
琉球・沖縄文学研究は日本文化の在り様をも照射する重要な研究と位置付けられる。その総合的研究のためには、限定された文学資料のみならず、琉球船漂流記録・地誌・近世末物産学資料・明治期新聞資料・漢詩文資料・茶会記録など広範な視野に立った資料活用が不可欠である。従来、焼土と化した歴史が影響して、沖縄県内の残存資料ばかりが重要視されがちであったが、県外のコレクションにも有益な関連資料が少なくない。 平成15年度は、主に四国地区の図書館・文庫を調査した。同地区には土佐藩主山内家の資料を一括保管する高知県立図書館・土佐山内家宝物資料館や、国文学者矢野玄道の蔵書を保管する大洲市立図書館などがある。これらの蔵書の中に、近世末期の琉球船漂流記録のほか、「琉球物」と呼ばれる近世後期版本が見出された。『大島筆記』『土佐清水裏琉球船漂着聞書』『琉球船漂着』『孤島漂流記』『漂流記』ほかの写本、『琉球談』『琉球状』『定西法師琉球国物語』等々である。以上を精査し、書誌・内容に亘る詳細なデータを採取して複写を入手した。とりわけ、『大島筆記』は土佐藩の戸部良煕による琉球船の漂流記録であって、引き続き土佐藩資料を精査することにより、諸相を窺い知ることが可能になるであろう。これらの漂流船記録は幕府・藩臣によって行われた詳細な取調べに基づき、琉球の風俗・学芸などの文学活動や庶民生活にまで言及しているため、琉球文化を立体的に伝えている。同時に、記録した側の関心の在処を知るについても最適な資料であり、大変有益であった。 また、本務先で九州・沖縄地区の図書館の資料調査撮影を担当していることから、平成15年度より、沖縄尚家の文書を撮影する機会を得た。重要文化財に指定された一群のコレクションのうち、冠船関連資料を重点的に閲覧、ほかに大量の和刻本漢籍の存在を知り、一部の調査を行った。今回、対象としたのは史書、四書五経の注釈書である。漢籍は、中国とも密接に交流した琉球を支えた資料として、今後も視野に入れなければならない。 なお、原本調査に加えて、古書や紙焼写真による資料収集をも行った。例えば、琉球の仏教説話や民間伝承とも関連する資料が掲載された地方誌『明野町史資料』『江の島錦絵集成』や、『外国人来琉記』『ペルリ提督琉球訪問記』のほか、国文学研究資料館所蔵のマイクロフィルム『琉客談記』『琉球使東叡山社参行粧』『定西法師伝』等々の紙焼写真である。四国地区で収集したデータと照合しつつ、より詳細な調査記録の完成を目指したい。
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Research Products
(2 results)