2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520141
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 研一 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 教授 (80170744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 緑 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 教授 (10219024)
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Keywords | 啓蒙主義 / 異境 / ロシア的農奴制 / ドイツ文化圏リヴォニア / 先住民農奴 / ブラック・ディアスポラ / 奴隷貿易 / アフリカ系英国人 |
Research Abstract |
佐藤は、昨年8月、ラトヴィア科学アカデミー図書館とエストニア国立図書館において、リヴォニア農奴制に関する資料調査を行った。前者は、リヴォニア農奴制関係の未刊資料や稀覯本の展示会を開催中であり、後者は、入植牧師の著した農奴制批判関係資料の宝庫であった。また、オーストリア国立図書館ではドイツ啓蒙と農奴制関係資料を、ボン大学図書館では18世紀ドイツ文学関係資料を収集した。しかもフランクフルト大学では、共同研究者ヒルメス助教授をはじめ、ヴーテノー教授らと、リヴォニアのドイツ啓蒙に関して有意義な討論を交わすことができた。のみならず、ラトヴィア大学のタテルカ教授と討議し、リヴォニア時代のヘルダーやJ.M.R.レンツに関する助言も得た。目下、これらの成果を基に、入植牧師フーペルらを囲む近代ドイツ文学の前衛、ヘルダーやレンツやメルケルやコッツェブーが、いかにロシア的農奴制と対峙しながら、社会的意識を培い文学的内実を醸成してゆくのか、論究している。 藤田は、基本的文献を渉猟しつつ、18世紀英国の黒人社会の実態について考察を加えている。今年度3月後半には、これらの論考を踏まえて、ロンドンにおいて1週間集中的に文献調査を行う。すなわち、主として英国図書館では、奴隷制・奴隷貿易・奴隷解放運動関係資料、およびアフリカ人自身の手になる自伝やパンフレット、書簡等の関係資料を調査する。なかでも、当時の黒人社会を代表する人物2人イグネイシャス・サンチョとオラウダ・エキアノに焦点を定め、彼らに関する資料の収集と発掘に努める。また、ナショナル・ポートレート・ギャラリー等において、黒人がいかに英国社会に取り込まれていたのかを、図像資料から明らかにする。文字文献からだけでは確認の困難な、下僕をはじめとする黒人の職種や生活実態を、視覚的なアプローチを通して探る。 なお、佐藤と藤田は、たえず研究成果を相互に検討し批判しあい、統一的視座を深めている。
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