2005 Fiscal Year Annual Research Report
中世フランス語版ジャン・ブレット『典礼大全』の言語地理学的・文献学的語彙研究
Project/Area Number |
15520151
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松村 剛 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (00229535)
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Keywords | 中世フランス語 / フランス語史 / 言語地理学 / 地方語 / 典礼 / 宗教用語 |
Research Abstract |
前年度の研究に基づき、本年度は以下の研究をおこなった。 1)中世フランス語版ジャン・ブレット『典礼大全』の校訂版を完成させ、その語彙の地理的・歴史的な特色を総合的に検討した。その結果、この作品がかつて言われていたようにポワトゥー地方で制作されたのではなく、オルレアネ地方で制作されたものであることが分かった。そのために、伝統的な形態論的研究に合わせて、語彙の地理的特色の研究を最新の知見を基におこなった。また、13世紀前半に作られたこの作品には従来のフランス語史研究の知識を補完する用例が多く使われていることを明らかにすることもできた。いままでの研究においては後の時代になってようやく使われ始めたとされていた多数の典礼用語がこの作品に初めて登場していることを浮き彫りにしただけではなく、より広い宗教用語に関しても多数の初出を収集することができた。さらには一般的な語彙に関しても、思いがけない箇所に多くの興味深い用例を見出すことができた。これらは現在刊行されつつある『古フランス語語源辞典』(Dictionnaire etymologique de l' ancien francais)(ハイデルベルク大学)にとって重要なデータになるばかりではなく、フランスのナンシーにある国立フランス語研究所(ATILF)が推進している『フランス語宝典』(Tresor de la Langue francaise)の歴史的・語源的な観点からの改訂作業にも大いに貢献するものである。 2)文献学にとって必須の作業である、中世フランス語の諸作品(トマ『トリスタン』、アンリ・ダンドリ『詩』、『フロワールとブランシュフルール』、『散文クリジェス』など)の校訂版の収集を続行し、その批判的な検討を続けた。それらの問題点、意義を多くの論文のかたちでフランスとドイツの学術誌(Revue de Linguistique RomaneならびにZeitschrift fur romanische Philologie)に発表し、成果は海外の研究者にしばしば活用され、引用されている。
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Research Products
(7 results)