2003 Fiscal Year Annual Research Report
ベンヤミンのアレゴリー的思考とメディア理論の接合をめぐる研究
Project/Area Number |
15520157
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
山口 裕之 東京外国語大学, 助教授 (40244628)
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Keywords | メディア理論 / ベンヤミン / パラダイム転換 / 文化研究 / 記憶 / 都市論 |
Research Abstract |
「研究目的」として掲げた3つの論点-1.ベンヤミンの言語論、文学論をメディア論的視点から分析、2.ベンヤミンの思考における、メディアの技術性と魔術性という両極の関係を分析、3.ベンヤミンのアレゴリー的思考とハイパーテクスト理論、映画理論との関係-は、本研究のための科学研究費申請後に執筆した3つの論文に基本的に対応している。「語ること・演じることの転換-メディアにおける技術性・身体性・魔術性」『総合文化研究』(東京外国語大学総合文化研究所)第6号、2003年、pp.68-85(本研究の研究期間直前のもの)では、メディアの展開において焦点を当てられる技術性だけではなく、これと一見対極にある魔術性が技術性とどのような関係にあるのかを考察した。この論文は、本研究のもっとも基盤をなす部分に属すものである。ついで執筆した「Die deutsche Kulturwissenschaft im Spiegel」は、狭い意味でのベンヤミン研究ではないが、人文科学におけるパラダイム転換を主題とするものであり、その意味で本研究が向かう地点を扱うことによって、本研究の方向付けを行うものとなっている。第3の論文「敷居を越える-都市の形象たちにおける「想起(Eingedenken)」では、ベンヤミンの都市論を素材としながら、彼の「記憶」をめぐる思考と歴史哲学との関係に光を当てることを試みた。この論文そのものは、ベンヤミンの記憶に関する理論とメディア理論との関係を直接に扱っているわけではないが、メディア理論を中心に据える本研究の内部でしかるべき位置を占めるものとなっている。 また、「研究計画・方法」として掲げたことがらについては、新たなベンヤミン文献、およびメディア理論関連文献の収集・講読を進めるとともに、ベンヤミンのテクストのOCRによる電子テクスト化にも着手している。現在のところ、研究の進捗状況として当初の計画よりも立ち後れていると感じている点は、研究内容そのものに関してはベンヤミンのミメーシス論のメディア理論の文脈における分析、また研究のための予備作業に関しては、OCRによる電子テクスト化の進展である。いずれも、新たな年度において集中的に進めていく予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 山口裕之: "敷居を越える-都市の形象たちにおける「想起(Eingedenken)」"『総合文化研究』(東京外国語大学総合文化研究所). 第7巻. 68-84 (2004)
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[Publications] YAMAGUCHI, Hiroyuki: "Die deutsche Kulturwissenschaft im Spiegel"Neue Beitrage zur Germanistik. (発表予定). (2004)