2004 Fiscal Year Annual Research Report
ベンヤミンのアレゴリー的思考とメディア理論の接合をめぐる研究
Project/Area Number |
15520157
|
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
山口 裕之 東京外国語大学, 外国語学部, 助教授 (40244628)
|
Keywords | メディア理論 / ベンヤミン / パラダイム転換 / 文化研究 / 記憶 / 都市論 / 歴史概念 |
Research Abstract |
1.ベンヤミンにおける思考の特質を、メディア理論におけるハイパー的特質と関連付けていく意図のもとに、とくにベンヤミンの『パサージュ論』の電子テクスト化を進めているが、現在のところ、OCRによる読み取りが完了した段階で、データの修正とハイパーテクストとしての構成は次年度の課題となった。 2.ベンヤミンにおけるメディアの問題は、彼の「アレゴリー的思考」を通じて、記憶・都市論・歴史概念の問題と密接に結びついていることが、ますます明らかになった。現在、ベンヤミンにおける都市・記憶・歴史をめぐる論文を執筆中。この論文では、(1)「ベルリン--大都会交響楽」、(2)「ベルリン・天使の詩」、(3)「ベルリン・バビロン」という3つの映画を軸としつつ、それぞれ以下の主題を扱う。(1)【アレゴリー的思考】1920年代ベルリンにおけるアレゴリー的な都市へのまなざし、断片によるモンタージュ的構成のコンセプト、(2)【歴史概念:歴史としての世界】無時間的な神・天使の世界と歴史/物語の世界の対比、(3)【歴史概念:自然史・時間性の空間化】瓦礫としての都市、空間化された歴史としてのベルリン・ユダヤ博物館(リベスキンド)、「モーゼとアーロン」(シェーンベルク)における神の世界と歴史の世界。 3.より基礎的な文献学的研究として、ベンヤミンの模倣理論(『模倣の能力について』『類似的なものの理論』)が彼のメディア論的な思考のうちにどのように位置づけられるかを扱う論文を執筆中。 4.ベンヤミンのアレゴリー的思考との接合という論点に収斂させる以前の、メディア理論の基本的枠組みを、とりわけ人文的思考とのかかわりに焦点を置きながら整理しつつある。この方向で、メディア理論を概観する著作を構想中。(1)メディア理論の基本的テーゼ、(2)メディアと身体性、(3)人文的思考にとってのメディア、(4)ハイパーテクストと人文的思考。
|