2005 Fiscal Year Annual Research Report
17世紀イギリス王党派文学における隠蔽性とジャンルの使用に関する研究
Project/Area Number |
15520160
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
松崎 毅 お茶の水女子大学, 文教育学部, 助教授 (40190441)
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Keywords | 17世紀 / 詩 / 王党派 / イギリス / 文学ジャンル |
Research Abstract |
16年度に引き続いて資料の収集と分析を行った。牧歌や哀歌に加え、農事詩、大全等のジャンルについて資料ならびに書籍を収集したが、これらについてはなお分析を続行中である。一方、16年度から継続している課題のひとつとして、読み手が階級的に限定されるジャンルとしての宗教詩に特に注目し、1650年代に書かれたHenry Vaughanの宗教詩について、ジャンルによる政治性の隠蔽という観点から分析を行った。Henry Vaughanは王党派詩人として恋愛詩等の世俗詩から出発したが、内乱により王党派が敗北し、国教会信仰が非合法となったのちに突然宗教詩に転じた詩人である。従来のVaughan研究において、彼の宗教詩はJohn DonneやGeorge Herbertの流れを汲むprivate prayerの典型として論じられてきたのであるが、その宗教詩を1630年代から50年代までの社会史的文脈に照らして精確に読み込んでいくと、じつはそれがしばしば、内乱に敗れた王党派・国教徒からの異議申し立てとしてのpublic discourseとなっていることが分かる。宗教詩あるいは「私的な祈り」という解釈の枠組みを課されることで、詩はそれが含む「公的言説」を曖昧化され無害化されるが、そこに含まれる公的言説は実は強く政治的であり攻撃的である。それは、彼の宗教詩への「転向」そのものが、じつはそのような政治的意図を孕んだものではなかったかと疑わせるのに十分なのである。一つ例を挙げるならば、彼の代表作の一つ‘The World'は、その内実において1630年代のロード主義国教会の救済理念を称揚し、説教を重んじるピューリタンの態度を椰楡したものだが、「俗世の忌避」あるいは「永遠への希求」という一見して「宗教的」なテーマがその政治性と攻撃性に目隠しを施すことで、その真意を極めて巧妙に隠蔽しているのである。この‘The World'の解釈については研究論文を作成し、日本英文学会の機関紙に掲載した。
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