2005 Fiscal Year Annual Research Report
15世紀ノヴゴロド及びモスクワ諸年代記の文献学的研究
Project/Area Number |
15520162
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
中澤 敦夫 富山大学, 人文学部, 教授 (90242388)
|
Keywords | 年代記文献学 / 中世ロシア / ノヴゴロド年代記 / モスクワ年代記 |
Research Abstract |
研究の最終年度にあたる平成17年度は、15世紀のノヴゴロド・モスクワ年代記の中でも重要な位置を占める「ノヴゴロド・カラムジン年代記」の第1部(Новгородская Карамзинская летопись,подборка)について、記事の出典を特定し、出典の読みとの異読を網羅的に示し、出典の特徴などについて注釈をつけた「注釈テキスト」を完成させた。 同時に、「注釈テキスト」にもとづいてこの年代記の分析をおこない、出典、編集傾向、編集者像、編集方針などについて突っ込んだ考察を行った。その結果、2003年に学会発表を行った年代記の性格付けを若干修正し、この年代記はノヴゴロドで成立したことに疑いはないが、初期キエフ・ルーシの歴史をノヴゴロドの歴史に結びつけ、「ルーシ」としての正統性を与えようとする指向とノヴゴロドの歴史的な教会活動を重視する傾向のうち、後者に力点が置かれていることを考証した。 ついで、「ノヴゴロド・カラムジン年代記」の第2部(Новгородская Карамзинская летопись,первая подборка)についても同様の「注釈テキスト」の作成に入った。この年代記は出典が多様化して複雑なため、考証に時間がかかり、研究の最終年度までに作業を終えることはできなかった。「注釈テキスト」の完成とその考察は今後の課題である。最終年度の「研究成果報告書」には、第1部の「注釈テキスト」を全文掲載し、あわせて、その性格を論じたロシア語論文を付すこととした。 このテーマは今後も継続的に取り組むべき大きな問題であり、2006年11月27・30日にサンクト・ペテルブルグにて行われる、第三回リハチョフ学会(Третьи лихачевские чтения)(テーマは「古ルーシの文化遺産」)での研究発表では、第2部の考察を含み込んで年代記の性格づけ行う予定である。
|
Research Products
(4 results)