2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520172
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮内 弘 京都大学, 文学研究科, 教授 (90047407)
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Keywords | ラーキン / 文体論 / 現代英詩 / 韻 / 言語分析 / 形式と内容 / イェイツ / 批評 |
Research Abstract |
今年度も前年に引き続き、夏休みを利用して、イギリスのハル大学図書館の資料を調査した。まずこれまで調査することができなかったいくつかの草稿原稿を閲覧しながら、作品の構造や文体的特質を考察しようと試みた。その過程でラーキンに特有なさまざまなレベルでの二重構造があることがわかった。そこで広義の意味でのエレジーと死に関する詩を選んで、文体論的見地からこれらの詩に見られる形式と内容との相関関係に焦点を当てながら、二重構造を分析していった。具体的にいうと、二つのジャンルの二重構造(「お次の方どうぞ」「旅立ち」「皮膚」)、書かれていることと、書かれていないこと(「起こったことを忘れよ」)、日常的なものと非日常的なもの(「四月の日曜日に雪が降り、」)との二項対立的構造、二重の声(「お子さん用に一つお持ち帰り下さい」「粘液腫症」)、生とその裏に潜む死の二重性(「刈り取られた草」)、葬式が醸し出す悲しみと陽気さの二つの気分の融合(「ダブリン風」)などである。これらの詩は一見構造が簡単で、深い意味を有していない印象を与えるために、充分論じられてこなかったきらいがあったので、私の研究はこれまで欠落していた部分をいくらかでもうめることができたのではないかと思う。この研究成果は2006年3月発行の京大文学部の研究紀要に発表した。 その他、ハル大学に保管されているラーキン関係のビデオをも調査した。またイェイツに関しては最晩年の時期の作品の文体的特徴とその背景を考察した。
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