2003 Fiscal Year Annual Research Report
グローブ座におけるエリザベス朝演劇の舞台空間と上演の研究
Project/Area Number |
15520173
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
太田 耕人 京都教育大学, 教育学部, 助教授 (40168935)
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Keywords | The Globe / Shakespeare / Elizabethan Drama / stage directions / The Rose / The Blackfriars / original staging / stage posts |
Research Abstract |
(1)グローブ座を初め、二階舞台を支える(舞台上の)柱があった劇場において上演されたことが確定できる16〜17世紀の英国演劇を、ファクシミリおよび古版本にもとづいて網羅的に調査し、柱に言及するト書きやせりふを採取し分析した。その結果、創作年代順に、柱が上演に取り込まれていく過程に、ある傾向があることを発見した。 1550-80年代には、演技のために舞台上の「場所を指示する記号」だった柱は、1600年前後になると、登場人物がぶつかる「障害物」、そして待ち伏せや立ち聞きのための「隠れ場所」を表すようになる。1610-30年には物や人を「結わえつける場所」として応用され、コミカルに擬人化もされるようになった。 (2)ただし、こうした場合にいつも舞台上の柱が利用されたと断定するのは安易なことも分かった。たとえば立ち聞きの「隠れ場所」として最も一般的なのは、統計的にみて圧倒的にアラスの後ろであり、「結わえつける場所」としての柱も『スウェットナム』の扉絵のように、しばしば持ち運びできる木柱だった可能性がある。またいくつか古版本の口絵を検討して、類似場面の上演の可能性を絞った結果、現代英米の学術的な版本で、舞台上の柱を利用したと注釈者が推定している箇所が、柱を用いた可能性がかなり低いことも確かめられた。 (3)第42回シェイクスピア学会(2003年10月11日、金沢大学)で、この科研を受けている研究課題について、セミナー「シェイクスピア時代の上演と舞台空間」を主宰した。10ヶ月前から準備を始め、2003年9月にロンドンの大英図書館で、他の3人の参加者とともに資料を調査し、打ち合わせた。stage posts, tramp doors, the balcony stage, the central opening, the flying machineについて分担して、過去の劇場建築研究を洗いなおし、それに最新のト書き研究や、現在判明しているさまざまな一次資料を接続するように指示を与えた。それを帰国後、太田が中心になって綿密な議論を重ね、当時の劇場空間についていくつもの新しい知見を発表することができた。
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Research Products
(1 results)