2004 Fiscal Year Annual Research Report
ワーグナー、ニーチェ、ヘリゲルにおける文化危機の自覚とその克服過程の比較検証
Project/Area Number |
15520182
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
谷本 愼介 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (10114555)
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Keywords | 西洋近代の文化危機 / オイゲン・ヘリゲル / ワーグナー / ニーチェ |
Research Abstract |
本年度の研究の中心は、西洋近代における文化危機の内実を明確にすること、およびその危機の克服への具体的試みとして、オイゲン・ヘリゲルの場合を明確に跡付けることにあった。 まず第1の問題については、西洋近代を宿命づけたアポリアとして、2003年9月にドイツのバイロイト大学で開催された国際シンポジウム「戦後ヨーロッパ世界の東アジア文化受容」における講演のなかで、提起した。このアポリアとは、「人は生きるために神(神的存在)を絶対に必要とする」という命題と「人は生きるために神を絶対に殺さなければならない」という相反する命題のせめぎ合いである。2004年度は、このアポリアに文化危機の内実が凝縮して表されている実態を、より明確にする作業に費やした。 第2の問題、つまりアポリア克服の具体例としてのヘリゲルについては、彼が赴任していた東北大学に赴いて、とくに彼と、弓道修業の恩師である阿波研造に関する貴重な資料を入手できた。その資料の分析によって、ヘリゲルによるアポリア克服へのプロセスがより明確にすることが出来た。 以上の2つの問題に取組んだ結果、紀要論文「西洋近代における精神の危機と、その克服の道-オイゲン・ヘリゲルの場合」を完成することができた。 西洋近代の文化危機に対して、わたしの提起したアポリアによるアプローチは、未だ、誰によっても試みられていない。このアポリアの内実をよりいっそう鮮明にすることによって、アポリアの有効性を証明することが次年度以降に残された課題である。オイゲン・ヘリゲルについては、いままで彼の弓道修業に焦点を合わせた研究はあるが、彼にとっての弓道と禅仏教の関わり、およびそれらと西洋神秘思想との関わりを明確にしたのは、拙論が最初である。
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Research Products
(1 results)