2005 Fiscal Year Annual Research Report
ワーグナー、ニーチェ、ヘリゲルにおける文化危機の自覚とその克服過程の比較検証
Project/Area Number |
15520182
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
谷本 愼介 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (10114555)
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Keywords | 西洋近代の文化危機 / ニーチェ / ワーグナー / マンフレート・エーガー |
Research Abstract |
1.2005年3月に約3週間、ドイツおよびイタリアにおいて、ニーチェとワーグナーおよび両者の関係にかんする資料収集を行ったが、とりわけバイロイトにおいてはワーグナー博物館に所蔵されているワーグナーの聖書講読にかかわる貴重な一時文献を精査することができた。この作業は平成18年度にまとめる予定のワーグナーにおける「文化危機意識」を論ずるために欠かすことのできない資料となるはずである。またバイロイトでは、当地在住の前ワーグナー博物館館長マンフレート・エーガー氏とわたしの問題意識にかんして数日間にわたって質疑応答することができた。この作業は現在執筆中のニーチェの「文化危機意識」にかんする論文の内容に貴重な示唆を与えてくれた。わたしの問題意識の核心は、前年度の実績報告書にも記したとおり、オイゲン・ヘリゲルを捉える視点として提起した「西洋近代末期における宿命的アポリア」の具体的検証にあって、ニーチェの場合、「オイディプス」ならびに「母権制」の問題検討が必須であろうという有益な示唆をエーガー氏から得ることができた。その成果は来年度早々には論文として公表の予定である。 2.上記のM.エーガー氏の、ニーチェにおける「ワーグナー問題」を論じた大著『ニーチェのバイロイト受難劇』の翻訳作業を進行し、論点の核心をなす「盗みの天才」としてのニーチェ像が披瀝される一章「ハンスリックかく語りき」の訳を学部紀要に発表した。加えて付論として、著者マンフレート・エーガー氏の論点の独創的意義と問題点を簡潔に記した。同氏のワーグナー・ニーチェ関係への視点は、ドイツ本国において未だにアカデミズムの権威から認知されていないために、日本においてもまったく問題視されていないが、この問題を見る際にいずれ無視できないものとして認められるためにも、わたしは翻訳作業を続行中であり、数年後には全訳を公刊の予定である。
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Research Products
(1 results)