2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520187
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
太田 一昭 九州大学, 大学院・言語文化研究院, 教授 (10123803)
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Keywords | 地方巡業 / 地方自治体 / 近代初期イングランド / 英国ルネサンス / 支払い記録 / 大衆劇団 / 上演禁止 / 演劇統制 |
Research Abstract |
"Payments to Travelling Players by Provincial Cities and Towns,1552-1642"(B5判20頁)を刊行した。これは、近代初期イングランドの地方の市や町の、対巡業劇団支払い記録を表にしたものである。本表は、トロント大学出版局刊『初期英国演劇関係記録』(Records of Early English Drama)に基いて作成した。Bath、Bridgwater、Bristol、Coventry、Norwichの記録を収めている。本表は、それぞれの自治体が、16世紀中期から1642年の劇場閉鎖までに、各年度にどの劇団にどれだけの支払いをしたかを明示する。自治体によっては、17世紀以降、巡業劇団に公演を許可しない事例が目につくようになるが、上演禁止記録情報も表内に記載している。資料に登場する劇団数は、90を超える。劇団は、パトロン(劇団庇護者)名によって表した。表の末尾に、ほとんどすべてのパトロンについて、基本情報(姓名、生年、没年、爵位継承年)を掲載している。本表には、400強の注が付せられている。注の一部は、支払い記録をより詳細に説明したものであるが、多くは、支払い日を(判明している分について)記したものである。 16-17世紀イングランドの劇団の地方巡業については、従来、かならずしも正しいとは言いがたい通説がまかり通っていた。たとえば、ロンドンの劇団は、夏場に疫病が流行すると劇場が閉鎖されたため、地方巡業を余儀なくされたという説。このような見方が誤っていることは、本表とその文末注を読めば一目瞭然である。ロンドンの劇団でも、16世紀末のシェイクスピアの劇団のようなごく一部の劇団を除いて、疫病の流行とはかかわりなく、定期的に地方を巡業していたことは明白である。今年度に刊行した資料は、上記5つの市と町に関するものであるが、現在、他の自治体についてこの表化作業を行っている。最終的には、20を越える自治体の記録をまとめ、より信頼性の高い資料を作成する予定である。 今年度は、上記の表化作業とともに、地方の演劇関係資料に現れる、宮廷祝典局長関係記録の調査を行った。これは、筆者の従前からの研究課題、英国ルネサンス演劇統制研究に関連したものである。
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Research Products
(1 results)