2003 Fiscal Year Annual Research Report
ベンヤミンとヘッセルにおける「住む」の表象と住居問題
Project/Area Number |
15520191
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
園田 尚弘 長崎大学, 環境科学部, 教授 (60039790)
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Keywords | 集合住宅 / ドイツ労働者の住環境 / 「住む」ことと「安全感」 |
Research Abstract |
ベンヤミンとヘッセルにあって「住む」という表象はいかなるものであるかという問いから出発し、具体的な住居、住宅問題に関する彼らの見解をあきらかにするのが研究テーマである。ベンヤミンやヘッセルの「住む」ことの表象には庇護された安全感ということが密接にかかわっている。特にこれについてはヘッセルの「住む」ことのイメージが理解の助けになる。geborgen,あるいはGeborgenheitはヘッセルの「住む」のイメージのキーワードである。これは豪華な室内に暮らすことでもなく、周囲から隔絶して暮らすことでもない。親しみの持てる通りや区域に短期間眠りめざめることでもかなえられる行為である。フラヌールであったヘッセルにとって、パリのホテルは手短に「住む」ことを実感することができる空間であった。ベンヤミンにあってもGeborgenheitは「住む」ことと深く関わっていた。後年彼がベルリンに住むことができないというとき、それは幼年時代には与えられていたGeborgenheitが奪われたという意識と関わりがあう。しかしプロレタリアの子弟にとっては日常的にGeborgenheitは奪われている。ブルジョアであったベンヤミンやヘッセルがこのことに気づいたとき、かれらは労働者の住居の現状にも目を向けるのである。今年度は以上のような研究の骨格を作り上げるために、ボルノウやバシュラールの空間論の研究、ベンヤミン、ヘッセルのテクストの精読をおこなう一方、ベンヤミンの空間論の解明のため、2004年3月にはパリでパサージュの調査をおこなった。また2003年秋にはベルリンで集合住宅の調査をおこなった。
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