2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520203
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大和田 英子 早稲田大学, 国際教養学術院, 教授 (00203951)
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Keywords | アメリカ文学 / 労働 / 所有 / プロレタリア文学 / 社会小説 / 1930年代 / アフリカ系アメリカ人 / アメリカ神話 |
Research Abstract |
「労働」と「所有」の概念から派生するさまざまな文化・社会・政治的背景およびその文学的表象を分析し、文学史を横断する考察を試みた。本年度は研究会を5回開催し、テキストを選定し、その解読・分析を行った。1930年代のアメリカのプロレタリア小説の達成と限界を明らかにしようとしたテキストでは、膨大な量の文献を用いることで一貫してプロレタリア文学に関する既成概念を変革することに挑戦している。これまでの左翼文学史がいかに政治的偏向を帯びたものであったかを検証し、1930年代の多数のプロレタリア小説を「虚構的自伝」、「ビルドゥングスロマン」、「社会小説」、「集団小説」の四つのタイプに分類して、それぞれの形式の政治的意義を個々の作品を通じて具体的に考察した。また、アメリカ人の労働に対する意識を考察するうえで、「アメリカの神話」がどのように歴史的に発展し、アメリカ人の思想や行動に影響を与えてきたかを、その弊害にも注目した。「アメリカの神話」とは、アメリカという国の存在意義や目的に関して多くのアメリカ人に無意識に共有されている物語である。本書の特徴の一つとして、強者が絶対化しようとするアメリカ神話には常に周縁化された人々から見た別の側面があるという考えから、アフリカ系アメリカ人の視点を取り上げた。さらに、1930年代の左翼活動における、政治的分野(CPUSA)と文化的分野(文学的ラディカリズム)との関係性について検討した。30年代の左翼文学におけるレトリックのなかで、ジェンダーが構築されると同時に、これによって女性をめぐる文学は周縁へと追われることになった。知識人と労働者階級との関係性というのは、1940年へと続く女性の革命的小説の核となっている。
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