2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520203
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大和田 英子 早稲田大学, 国際教養学術院, 教授 (00203951)
|
Keywords | アメリカ文学 / 労働 / 所有 / ハリウッド / 文化装置 / プロレタリア / 財産 / 1930年代 |
Research Abstract |
本年度は研究成果のまとめを行いつつ、研究会を2回開催、その他、研究成果発表に向けて、協力者(共著予定)との討論、打ち合わせを行った。特に、1930年代の文学・文化を中心に、その捉え方について様々な検証を概観した。 研究会では、「労働」に関して、プロレタリア文学をどう位置づけるか考察を行った。定説化された30年代プロレタリア文学批判に対しては、プロレタリア文学をモダニズムの一部と位置づけ、反駁の可能性を探ったBarbara Foleyとともに、Michael DenningのThe Cultural Frontを中心に、プロレタリア文学運動定説化に対する再検証を「文化戦線」という視点から行った。30年代に左翼文学が台頭したが、これは、人民戦線やCongress of Industrial Organization(以下CIOと略記)といった強力な社会運動が出現した結果であり、民間および国策双方による文化装置の急速な発展が関与している。アメリカにおける人民戦線は、産業組合主義、労働者階級の民族中心アメリカニズム、大恐慌を背景として急速に成長したCIOによって支えられていた。30年代はこのCIOの時代でもあり、それまで熟練労働者だけを組織していたAFLから、女性や非熟練労働者を含んだ新しい労働運動団体としてのCIOは決定的に重要な存在である。かたや、文化装置、Cultural ApparatusとはC.Wright Millsの言葉であるが、30年代においては、CIOを土台とした運動文化、ニューディール政策に基づく国家レベルでの文化制度、文化産業・特に映画界でのスタジオのもつ影響力、という三つが挙げられる。
|