Research Abstract |
実践研究の仕上げとして,童話作家たちの協力を得て,5日間の「子どもたちの童話創作ワークショップ」を開催した。本ワークショップは,アメリカのクリエイティブ・ライティング教育やライティング・キャンプを参考に企画され,国内の人材やノウハウの蓄積を活用することで実現を見た。具体的には,(1)執筆過程における子どもたち同士の横の関係と,(2)モデルとなる作家や創作指導者と子どもたちの直接のふれあいとの,縦横の織糸の交差に,特色がある。 本ワークショップにおいては,次の2つの観点からプロセス・ライティングの方法論の導入をはかろうとした。第1に,執筆過程を個人任せにするのではなく,「どう書いていいかわからない」という疑問に対応する方途を探ることで,人間形成や心情表現に偏った自習的な「創作活動」ではなく,構想やジャンル,題目,技術,モラル,意欲等を含めた「創作指導」を目指した。第2に,記述過程における指導者とのコンフェレンスや,子ども同士の作品の共有を通して,ワークショップが「学習の場」を超えた,楽しくかつ実りある「コミュニケーションの場」としても機能することを期待した。ここでいうコミュニケーションは,書き手同士の関係と,書き手と読み手との関係との双方のやりとりを指している。 学習とコミュニケーションとの重視は,エクササイズの活用にも同様に表れている。豊富なエクササイズは,合評とならんで,アメリカの創作ワークショップの特色でもある。十分に練られたエクササイズは,ライティングの技能を楽しく身につける助けになると同時に,ワークショップ参加者のコミュニケーションを円滑にする効果がある。アイス・ブレーカーとしての導入はもちろん,生の作品について話し合う前のワンクッションとして,特に日本の学校文化では,エクササイズでの練習経験は子どもたちの助けになると思われる。
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