2005 Fiscal Year Annual Research Report
英雄叙事詩と軍記物語の対照研究--成立・書承期の社会背景を中心に
Project/Area Number |
15520212
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
寺田 龍男 北海道大学, 言語文化部, 助教授 (30197800)
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Keywords | 英雄叙事詩 / 軍記物語 / 不確定テクスト / 文字文化 / 口承文芸 / 比較文学 / 史料論 |
Research Abstract |
平成17年度も海外研究協力者と緊密な連絡体制をとりつつ、以下の研究をおこなった。 1.ケルン大学のヨアヒム・ブムケ教授による西欧中世叙事詩の「オリジナル複数説」は、日本の軍記物語研究者の間では依然として知られていないため、この最新の理論に独自の知見を加えて批判的に紹介する研究を発表した。 2.ドイツでは目下、ブレーメン大学の研究スタッフを中心に英雄叙事詩の新たな校訂版を出版する計画が進行・実現しつつあるので、このプロジェクトに協力するための基礎資料として、各作品の語彙に関して10年ほど前から収集している包括的データを発表した。これに対して作業グループのソニア・ケルト博士から謝辞が寄せられた。 3.平成16年に第一回日本独文学会賞を受賞した論文「Doppelte Lehnsbindung im Mittelalter. Eine Fallstudie」にその後得た知見を加えた上で和訳を発表し、日本における同様の現象(中世武士のいわゆる「去就の自由」)との比較点を提示した。なおこの論稿は複数の歴史学研究者の推薦で執筆したものである。 4.ギーセン大学のオトフリート・エーリスマン教授の退官記念論文集に寄稿する依頼を受け、英雄叙事詩と軍記物語に見られる斬撃戦などの激しい戦闘描写と戦死者の遺体の扱いにまつわる記述を比較する論稿を執筆した。これにより、従来はその多くを聖書の記述に結びつけていたヨーロッパの文献研究に新たな視角を提示した。 なお最終年度となる平成18年度は、これらを含む既発表論文に対する批評に答え、さらに比較の「意義」を実証的に考察する論文を発表した上で、助成研究の報告書をまとめる。
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Research Products
(4 results)