2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520231
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
星名 宏修 琉球大学, 宏修, 助教授 (00284943)
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Keywords | 在台日本人 / 皇民化 / 「国語」教育 / 植民地主義 |
Research Abstract |
本年度は本研究の初年度ということもあり、植民地期の文学作品の収集に重点をおいた。また来年度以降、台湾原住民の描かれ方に関しても研究を行うため、該当する人類学的調査報告等の資料収集を行った。 また本研究領域でまだ先行研究の面で立ち後れている、台湾在住日本人文学者の作品分析に着手し、以下の(1)で示した論文執筆を行った。 (1)論文「<共感>の「臨界点」-徳澄〓の作品を読む」は、「皇民文学」期に『文芸台湾』誌に作品を発表した徳澄〓の小説を、台湾人への<共感>をキーワードに分析したものである。台湾や朝鮮などの植民地において、日本人の多くは「支配者」として、被植民者に対して傲慢なまなざしを注いでいた。しかし、徳澄〓の作品からは、台湾人への真摯な<共感>を読み取ることができる。だが彼女のデビュー作「海ほほづき」には、そうした<共感>さえもが植民地主義へと回収されてしまう危険性があることを指摘し、被支配者である台湾人からの<共感>を拒否する視線を描き得た第二作「小豆飯」を高く評価した。 (2)共著『中国二〇世紀文学を学ぶ人のために』に、「「中国二〇世紀文学」にとって「台湾の文学」とは」を執筆した。「台湾の文学」は、長期に渡る植民地時代を経験していることもあり、作者の言語や国籍(「なにじん」であるのか)が多様である。そうした「台湾の文学」の複雑性を紹介しながら、「日本文学」や「中国文学」など、国民国家の名前を冠した文学の構成原理を問うた。
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