Research Abstract |
英語やドイツ語との比較対照において,日本語の名詞の統語論的・意味論的・語用論的特性を分析した。Krifka, Chierchiaらは,冠詞の不在,複数形の不在,豊富な類別詞(助数詞)という性質から,中国語・日本語タイプの名詞は質量(物質)名詞に相当し,意味的に個体としての種(kind)を表わすと分析した。これに対して本研究では,日本語タイプの名詞は質量名詞に対応し,意味的にも種指示が出発点ではなく,英語と同様に述語意味(predicate)から出発することを明らかにした。水口(2004)などは,日本語の助数詞は,均質指示概念に基づき名詞の可算・不可算性の区別を行うと分析したが,本研究では日本語助数詞は,英語・ドイツ語の数に相当する数範疇に属するが,日本語の名詞は全般に質量名詞であって,個体単位をもつ"furniture"タイプの可算的な質量名詞と,均質指示の不可算的な質量名詞に区別されることを明らかにした。「ネコ」のような名詞では,最小単位(個体性)は認められるが,単数・複数の区別をもたず,均質指示的であり,そのままでは可算化されないので,助数詞が必要とされる。さらに,「三人の学生」,「学生三人」,「学生が三人」といった助数詞の語順の相違は異なる統語構造から派生し,意味論的にも相違があることを明らかにした。これらの成果を,論文(「日本語の助数詞と数範疇の考察」(2005),学会発表("Klassifikatoren im Japanischen und im Deutschen-eine kontrastive Analyse(日本語とドイツ語の助数詞の比較対照)",日本独文学会第33回語学ゼミナール,2005)の形で公表した。
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