2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520263
|
Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
吉田 豊 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (30191620)
|
Keywords | イラン語 / ソグド人 / ソグド語 / シルクロード / 昭武 / エフタル / 西安墓誌 / 記述文法 |
Research Abstract |
ソグド語は現在のウズベク共和国とタジク共和国に8世紀まで住んでいたイラン系の民族の言語であり,今は死語となっている.ソグド人はシルクロードの交易民族として活躍し,遠く中国にもやってきていた.本研究は,そのソグド語の言語学的な研究である. 本年度の最大の成果は,中華人民共和国西安市で昨年発見された,漢文とソグド語のバイリンガル碑文について,解読を行うとともにその成果を,北京で開催された国際学会において発表したことであった.この碑文は西暦580年に書かれたソグド人の墓誌であり,確実な年代の判明する数少ないソグド語の資料としてきわめて貴重である.またソグド語文献全体のなかでは比較的に古い資料に属しており,書体も含めて言語変化の様相を知る重要な資料である.そしてその言語は本研究のテーマであるソグド語の記述文法の点からも興味深いデータを提供している.たとえば動詞の過去を表す形式がすべて過去形(preterite)で表現され,未完了形(imperfect)が使われないこと;過去形では古典的なソグド語とは異なり,男性名詞を主語とする場合と女性名詞を主語とする場合に異なることなどである.碑文に関する歴史的研究も含めて英文による論文として,この学会のプロシーディングに掲載される予定である.これとは別に,昨年度の成果に基づきながら,今年度からはソグド語の記述文法の執筆を開始した.英文による文法記述で,日本人以外の研究者も利用できるようにしようと考えている. ソグド人の祖先についての古代中国の伝説に現れる「昭武」という姓の語源とそれにまつわる伝説の解釈についての論文を3点すべて英語で発表した.そのなかで「昭武」は,5世紀から6世紀にかけてソグドを支配した謎の民族エフタル族の言語の形式で,支配者の称号を表す語で有るとする説を展開した.別にソグド語のなかのエフタル語からの借用と考えられる語を集めた.これらは今後学界に置いて活発に議論されるテーマとなるであろう.
|
Research Products
(5 results)