2005 Fiscal Year Annual Research Report
音声の遺伝-音響学的測定と知覚的分析による個人音声のプロファイル化
Project/Area Number |
15520279
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Research Institution | Kyushu University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
苅安 誠 九州保健福祉大学, 保健科学部・言語聴覚療法学科, 助教授 (00320490)
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Keywords | ヒト音声 human speech / 遺伝 genetics / 音響学的測定 acoustic measures / 知覚的評価 perceptual judgment / 個人差 individual differences / プロファイル化 profiling / 双生児サンプル twin sample / 調音(構音) articulation |
Research Abstract |
ヒト音声は、遺伝的に規定され、環境の影響を受けると考えられてきたが、音声のどの側面に遺伝的影響が顕在化するかは明らかではない。これまでの研究(科研H13-14・苅安)では、声の高さや共鳴周波数から推定される声道長に双生児(一卵性>二卵性)の近似性を認め、遺伝的に規定される身体構造の類似性がその背景にあることが示唆された。本年度の研究では、音響学的測定と知覚的分析により、(1)双生児音声の近似性を示す・示さない項目を明らかにし、(2)成人と小児の発語資料を基に、個人音声のプロファイル化と識別が可能であるかを調べること、さらに(3)文献および本研究の知見を踏まえて音声の遺伝(生まれ)と環境(育ち)について整理すること、を目的とした。 双生児小児・成人合わせて32組の音声資料(母音発声・語の生成)の音響・知覚分析により、複数の測定・評価(セット)が得られた。中でも、声の高さ(音声基本周波数FO・話声位SFF)、話速度(分節持続時間より算定)、ホルマント周波数、調音の変異は、双生児で近似する傾向を認めた。発語時(子音)の喉頭調節を示すVoicingの様相や口腔調音を反映するスペクトルについては、かなりの個人差もあり、双生児での近似性の可能性が示された(分析中)。幼児と成人・高齢者(双生児を含む)の音声資料をもとにした知覚実験により、話者の性別・年齢の同定が行われた。この結果、一般の聴取者でも、話者の性別と年齢の推定はほぼ可能であった。音響学的測定をもとに分析すると、主に声の高さ(話声位)により幼児と成人女子と成人男子が区別され、話速度により高齢者・幼児と成人が識別される傾向を認めた。双生児の音声は、知覚的にほぼ同定された。なお、発声発語障害例では、話者の識別は音声の異常性によってなされ、高齢者の音声と認識される傾向があった。音声は、それを生み出す構造物(声道)とその運動という点で遺伝的に規定される部分がかなりあり、言語を含む環境と発語条件により生じる特徴が個人音声を修飾し、個人差を生むものであると考えられる。
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Research Products
(6 results)