2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520286
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
山本 いずみ 名古屋工業大学, 工学研究科, 助教授 (20211609)
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Keywords | ミステリー小説 / 翻訳 / 明治 / Edgar Allan Poe / The Black Cat / 榎本破笠 / 蔦紅葉 / The Murders in the Rue Morgue |
Research Abstract |
前年度に引き続き、E.A.Poeの作品を原作とするものの中から、今年度は"The Murders in The Rue Morgue"に焦点を当て、手軽に原本を見ることができない榎本破笠(1866-1916/本名虎彦/劇作家)の「蔦紅葉」(『やまと新聞』明治25(1892)年11〜12月47回連載。国立国会図書館マイクロ資料)を取り上げた。 「蔦紅葉」の中で展開される事件は、"The Murders in The Rue Morgue"をモチーフにした「シルビー母子殺し」の他に、"The Murders in The Rue Morgue"には記述されていない「士華殺し」「贋札造り」「了庵殺し」を含め、4つである。「蔦紅葉」ではこの4つの事件が有機的に結合し、「謎→観察・推理→解明」という推理小説の基本をきちんと抑えた展開となっており、これまで考えられて来た本格的和製推理小説の成立時期(大正期の江戸川乱歩)に疑義を挟む結果となった。以上の成果は、『榎本破笠「蔦紅葉」について付:魯庵と適堂の翻訳論争』(平成16年度分の研究成果報告書・私家版2005)としてまとめた。 なお、昨年度に引き続き"The Black Cat"に関する考察も進め、「独白する者-"I"の変遷-」と題し、伝統的な和文脈「私…われ/わが…」および漢文脈「余…われ/わが…」から新しい書き言葉「私…自分/自身…」へと移り変わる様相の一端を明らかにし、名古屋言語研究会で発表した。また、明治期の翻訳語という観点から「情報」という言葉の変遷をまとめ、「情報通」と題して『人間社会論集IV技術社会のバックグラウンド』(人間社会科学研究会2004年12月発行)に発表した。 今後はさらに対象作品を広げながら、研究を進めていく予定である。
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