2005 Fiscal Year Annual Research Report
「気づき」のレベルと言語変化-首都圏方言における調査を中心に-
Project/Area Number |
15520295
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
田中 ゆかり 日本大学, 文理学部, 助教授 (40305503)
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Keywords | 「気づき」 / 言語変化 / 東京首都圏 / アクセント / イントネーション / 関西弁 / 聞き取りアンケート調査 |
Research Abstract |
「気づき」のレベルと言語変化という観点から東京首都圏の言語状況調査を実施、「気づき」の観点を取り入れた報告を行った。2005年度に関する成果を以下に示す。 まず、「気づきにくく変わりやすい」言語事象として、アクセント・イントネーションに関する調査・報告を以下の通りに行った。 【論文1】「世田谷区立中学校に通う中学生のアクセントとイントネーション」(アクセント史資料研究会)『論集』Ipp.25-pp.48(2005年09月) 形容詞活用形アクセントと「とびはねイントネーション」についての聞き取りアンケート調査に基づく報告で、「アクセント単位が長くなった結果とびはねイントネーションが生じた」とする従来説に疑問を呈した。つまり、「とびはねイントネーション」は、まず2つの形態素が接合した複合アクセント型が形成され、さらに文末の「浮き上がりイントネーション」がかぶさった結果の音調とする従来説と、単純にみるわけにはいかない結果を示した。単純に従来説によって生じているならば、複合アクセント型が「とびはねイントネーション」より多く受容されていなければならない。しかし、調査では逆の結果となった。では、形態素ごとのアクセント型をイントネーションが破壊した結果、複合アクセント型が生じたと考えるかといえば、かならずしもそうともいえない。この点は今後の課題である。 次に東京首都圏における「関西弁」の採用行動をとりあげたものが次の論文。 【論文2】「東京首都圏における関西方言の受容パターン」『関西方言の広がりとコミュニケーションの行方』(和泉書院)pp.159-pp.178(2005年12月) 「気づきやすく変わりやすい」事象として語彙を取り上げた。アクセント事象についても検討したが、体系が異なる方言間においては語彙の積極的な採用態度と行動にもかかわらず、採用行動に結びついていないことが分かった。このことから、アクセント・イントネーションの「変わりやすさ」というものは、体系内において特徴的に観察されるものであることがうかがえた。
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Research Products
(2 results)