2006 Fiscal Year Annual Research Report
再帰形態素の特質を明らかにし照応理論を再構築する研究
Project/Area Number |
15520308
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
野口 徹 お茶の水女子大学, 文教育学部, 助教授 (20272685)
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Keywords | 照応 / 再帰代名詞 / 束縛理論 / 意味的合成 / 複合述語 / 代名詞解釈 |
Research Abstract |
平成18年度は、本研究課題の最終年度に当たり、過去3年にわたる研究の総括と今後の方向付けを行う段階と位置づけている。本研究課題の基本的な着想は、再帰代名詞に見られる意味解釈の可能性が再帰形態素の統語的な性質と意味的合成の可能性から導くことができるという点にあった。この着想に基づき、再帰代名詞の意味解釈の可能性として、以下の3つの事例があることを明らかにした。 (1)再帰形態素は意味解釈上他の述語と複合述語を形成する。 (2)再帰形態素を含む再帰代名詞全体が統語的連鎖を形成し、意味的には項として機能する。 (3)再帰形態素を含む再帰代名詞全体が選択関数の適用を受け、意味的には一項述語として機能する。 しかし、これらの可能性がどのように関係付けられるのかまだ十分に明らかになったとは言えない。とりわけ、長距離束縛や意識主体照応といった現象と再帰代名詞の中核的機能とがどのように関連付けられるのか、今後明らかにしなければならない。今年度は、この研究の準備段階として、意味的合成に関する研究を行った。具体的には、Pietroski (2005) Events and Semantic Architectureに基づき、意味的合成について主に形式意味論の立場から詳細な検討を行った。その結果は、日本英語学会の機関誌English Linguisticsに書評論文として掲載が決定している。 また、研究資料として代名詞解釈に関する研究書及び関連言語学書を購入した。照応全般に関する問題の確認と整理を行い、また、より大きな視点で問題を捉えるために、統語論・意味論全般に関する研究書にも目を通した。 本研究課題から得られた知見を今後さらに実質的なものにするために、英語に限らずできる限り数多くの言語からのデータ収集なども試みながら、詳細な検討を継続していく必要がある。
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Research Products
(1 results)