2004 Fiscal Year Annual Research Report
マロリーのウインチェスター写本とキャクストン版の言語差異に関する文献学的研究
Project/Area Number |
15520321
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
中尾 祐治 中部大学, 人文学部, 教授 (60021755)
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Keywords | Malory / Caxton / manuscript / incunabula / king Arthur / philology / late Middle English / bibliography |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、今年度もマロリーの作品の二つの異本Winchester写本(以下Wと略称)とCaxton版(以下Cと略称)の言語異同の研究を重ねた。今年度は、まず、論文‘Does Caxton Dislke Alliteration?-A Study of Book V in Caxton's Malory as Compared with Winchester Malory'を完成させた。二つの異本中、Winchester写本の第五巻(アーサー王のローマ戦役物語)のみは、Wの本文が頭韻詩Morte Arthureに全面的に依拠した特異な文体となっているが、Cではこの部分が全面的に改訂されていて、二つのテキストの本文が全く異なっている。この改訂はCaxtonの手によるものであると私はかつて論証したことがあるが、Caxtonの改訂の原因が頭韻にあったとする説がある一方、Norman Blake教授は、Caxtonは頭韻自体は嫌っていなく、書き換えた理由はむしろWにおける語彙であったと言う説を唱えている。本稿は、改訂の原因を第五巻のみに求めるだけでなく、全二十一巻を視野にいれた詳細な調査を行い、従来の説を超える説明を試みたものである。この論文は平成17年7月発行予定の韓国英語英文学会会長のPark Young-Bae教授の還暦記念論文集に掲載されることになっていて、現在印刷中である。 今年度の成果の二つ目は、『トマス・マロリーのアーサー王伝説:テキストと言語をめぐって』(風媒社、2005)である。これは中部大学ブックシリーズの一冊として刊行されるもので、現在印刷中である。私はある時期から今日迄論文は全て英語で執筆してきたが、テキストの問題は分野を超えて共通の問題であるので、中世の英語を専攻されている方々とは別の分野の研究者にも広く読んで頂くため、今迄の研究成果をできるだけ分かりやすく日本語で著したものである。 なお昨年度の報告書作成時期に印刷中であった論文は2004年中に全て刊行されたが、昨年度の報告書でページ等の情報が不完全であった一編については、今年度の研究論文欄に完全な情報を加えておく。 科研費を平成15年度と平成16年度の二年に亘って受けさせて頂いたが、今迄の研究の総まとの作業を行うのに、その恩恵が大であったことを特に付記させて頂く。
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Research Products
(3 results)