2005 Fiscal Year Annual Research Report
16世紀イエズス会インド管区の経済構造に関する研究
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15520387
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Research Institution | Tomakomai Komazawa University |
Principal Investigator |
高橋 裕史 苫小牧駒澤大学, 国際文化学部, 助教授 (30305966)
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Keywords | イエズス会 / ポルトガル / インド / キリスト教 / カトリック / キリスト教と経済 / ヴァリニャーノ / 東インド巡察記 |
Research Abstract |
平成17年度においては、財政状況の側面からイエズス会のインド管区の主要布教地別の経済規模と構造について、前年度同様、当時のイエズス会各種史料(資産目録、インド管区協議会議事録、宣教師の個別書簡、ヴァリニャーノの巡察報告書)を手がかりに研究し、以下の諸点を確認した。 1.ゴアはインド大陸の布教地の中では最も経済規模が大きかったが、反面、それはゴアのイエズス会の財政を常時圧迫し続け、ゴアのコレジオ自体で、日本の年関係費や収入額を上回る負債を抱えていた。 2.サルセッテの場合、経済規模はゴアほどではないにしても、布教地としての重要性から、額の大きい収入と財政規模を抱えていた。 3.コチンはサルセッテとほぼ同じ経済規模であったが、コチンの収入源として注目すべきは、真珠採取の利益の一部が財源として計上されていた。地元の産業資本と宗教との結びつきの在り方を示す、興味深い事例といえる。 4.バサインであるが、ここで注目すべきは、バサインの経済規模そのものよりも、むしろ同地が他のイエズス会布教地の財源を管理・供給していたという点である。 5.日本の場合、先に取り上げた、インド大陸内の4布教地よりもかなり遅く、16世紀の60年代に入ってから、本格的に教団運営が始まった。したがって、インド大陸の諸布教地よりも歴史は新しいのであるが、それに比して経済規模はゴアに次ぐものであった。これは、イエズス会が日本自体を東洋の布教地として重視したことが、収入の拡充などの経済規模に反映されることとなった。 平成17年度の研究成果を「2005年度政治経済学・経済史学会(旧称・土地制度史学会)秋季学術大会」において「経済的側面から見たイエズス会インド管区の個別主要布教地について」と題して、また「第44回北海道基督教学会大会」においても「イエズスによる対日軍事力行使をめぐる諸問題」と題して口頭表した。 なおこの3年間の「科学研究費補助金」による研究成果を、講談社選書メチエから『イエズス会の世界戦略(仮称)』として2006年10月に刊行予定である。
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Research Products
(1 results)